• 『アニ民256人目』6月18日に永眠された、たてかべ和也さん
  • 『アニ民256人目』6月18日に永眠された、たてかべ和也さん

  • 2015.07.09

 今週のアニ民は6月18日に永眠されました、たてかべ和也さんです。ここではいつものようにかべさんと呼ばせていただきます。それにしてももう256人を数えるこの「アニメ村の素敵な住民たち」、今までかべさんのコトを書いていなかったのはどーゆーコトでしょうか。ぼくにとっては自分のことながら調べてみて、「そんなバカな!何やってたんだ?」と心の中で叫んでしまいました。

 とはいえ、かべさんと初めて会った時はいつだったのか、はっきりと覚えてはいません。自分の担当作品で参加してもらったのは2008年「ヤッターマン」のみで、それ以外には仕事場ではあまりお会いしたことがなかったように思います。

 それなのに、ぼくはかべさんのことを勝手に恩人と思っています。仕事は違えど、このアニメーション業界の人間関係の中で、大切なことを教えてくれたからです。それは相手に対して会話や態度に出る“思いやり”です。言葉では簡単ですが、並ではないレベルです。例えば、かべさんと話してて不快になる要素がまったく無いのです。相手のことを深く鋭く思いやってくれているのがよくわかりました。「仕事は違えど」と書きましたが、これが役者の方々だったらもっと大きなことに違いありません。どんな人にも分け隔てなく仕事もプライベートも相談にのる、普通のマネージャー的立場でも難しいのに、超一流の役者としての自分のスタンスがありながらの行為は尋常じゃないのです。

 思えばかべさんのぼくに対する授業があるとするならば、それはいろんな役者さんたちが演じた舞台がはねた後の打ち上げだったかもしれません。ある時期はどんな人の公演に行ってもかべさんはいました。そして演じた役者の方々のみならず、それを観に来た仲間も一緒の席に招き入れ「あれは面白かったな~」「あんな演技が出来るなんてうまくなったじゃないか~」など声をかけてくれます。あのジャイアン以上のエネルギーをふるまい、場と人とを楽しくしてくれました。

 山本正之さん監修で「ヤッターマン」の挿入歌を代々木のスタジオで録音したコトを覚えています。「天才ドロンボー’08」「ドロンボー伝説’08」の2曲でしたが、小原乃梨子さんと八奈見乗児さんとの息もピッタリなハーモニーも最高で、この三悪が時代を超えてはびこる(笑)のがよくわかった楽曲でした。そう言えば実写版映画「ヤッターマン」にも小原さんと笹川監督と回転寿司屋のシーンで出演してましたよね。

 そんなわけで「ヤッターマン」のアフレコ収録時は本当に毎回感動感激でした。昔のアニメ日記にも書いていると思いますが、それこそガラス1枚で隔てられた間近な距離に、日本を代表する人間国宝たちの演技に触れられているようなものだったのですから。毎週目の前で繰り広げられる“三悪+ドクロべえ”の演技は少しも聞きもらせない気がしてました。そのドクロべえに続いてトンズラーも逝ってしまったのですね。かべさんのトンズラー、噛めもしないのに、じわっと味がありました。

 青山葬儀場でのお別れの際、普通なら並んでお線香をあげるのですが、かべさんの場合は違ってましたね。横に大きなお酒の樽がおかれ、みなお線香代わりに杯で献杯するなんて、最後までさすがとしか言いようがありません。長い間、本当にありがとうございました。享年80歳、心よりご冥福をお祈りいたします。