• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民164人目
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  • 2012.11.15

 今週のアニ民は東映アニメーションの西尾大介さんです。ここではいつものように西尾さんのことを大(だい)ちゃんと呼ばせてもらいます。僕が大ちゃんと初めて会ったのはもちろんTVアニメ「金田一少年の事件簿」一番最初の打ち合わせの時。が正式なのですが、実際にはもう少し早く、映画「金田一少年の事件簿 オペラ座館の惨劇」のアフレコの時でした。

 このアフレコ、なかなかな修羅場でして、原作の天樹先生も同席していて新たなアイデアがどんどん加わり、アフレコが進むにつれセリフなど内容の変更が生じて、それを別紙で次々に貼り付けていきます。少しでも面白いものにしようと、通常のアフレコでは考えられないレベルの改定をやっちゃってました。それをすべて指示してまとめあげていくのが監督の大ちゃんでありました。

 TVシリーズになっても監督としての大ちゃんは、何時でもギリギリまで粘る姿勢は変わりません。シナリオ作成時にウンウン唸り、絵コンテ描くのに吟味を重ね、音響演出やダビング作業も可能な限り煮詰める。金田一は大ちゃんが1本作る度に、この人いろんなものを自ら削り出してるよなあ、といつも感心していたものです。

 だいたい大ちゃんの代表作と言えば「ドラゴンボール」シリーズですよね。ストーリー進行や制作体制もろもろの制約がある中で、発想がすごいというかスケールがでかいというか、見る人を熱くアッと言わせる演出術にはいちいち唸るものがありました。

 先日「アニメだいすき!」(1987〜1994 YTV)の映像を整理してたら「サザンアイズ」という作品に大ちゃん監督クレジットを発見。そりゃそうだよな。ちょいとあげて見るだけでもデビューは「Dr.スランプ アラレちゃん」で先述の「DB」や「DBZ」、「蒼き伝説シュート」「ゲゲゲの鬼太郎(1996〜1998)」「ふたりはプリキュア(2004)」「ふたりはプリキュア Max Heart(2005)」これらすべてシリーズディレクターっていうんだから半端ない作品群ですね。その中でもOVA「Cryingフリーマン」(1988)なんてのもアニメだいすき!でお世話になってます。で、こうしてみると「金田一少年の事件簿」の方が異色作品なのね。

 大ちゃんは1959年4月1日生まれ。僕がそれから2週間後の4月14日なので学年は一つ上なんだけどものすごく近いのです。だからかしれないけどなんだかいろいろ生活や動きのリズムが似ている気もします。以前は飲み方やその会話の噛み方にいくつもの共通点を感じていました。

 大ちゃんは広島出身であります。もう10数年前になりますが、大ちゃんのお母さんが地元で飲食店を営んでいたので「広島国際アニメーションフェスティバル」の際にお伺いしたことがありました。そこに来れなかった大ちゃんの欠席裁判よろしく、大ちゃんの学生時代などの話をサカナに(この時初めて知った大ちゃんの高校時代の武勇伝は破天荒で面白すぎ)楽しく飲食させてもらい、さあお勘定となって支払おうとしたらおかあさん曰く「自分ちに遊びに来た息子の友人からお金をもらう母親がいますか」…少し押し問答の末、結局ご馳走になってしまいましたが、素直に感動ももらちゃって。なんだかおかあさんがそのまま自分の母親にもかぶってしまい、心から湧き出るような暖かい感謝の気持ちを良く覚えています。

 「金田一少年の事件簿」最新刊「20周年記念限定版」のコミックス発行に合わせて5年ぶりの新作アニメ制作が進んでいます。その3巻と4巻に付くのが「黒魔術殺人事件(前後編)」。この作品での大ちゃんのお仕事はなんとプロデューサー!僕もお手伝いしていますが、あの監督の時と全く変わらないパッションが一緒にいて懐かしくも心地よい。実は大ちゃん、ちょいと体調を崩したと聞きすごく心配してましたが、また一緒の時間を過ごせてうれしい楽しい金田一時間でした。アグレッシブというか楽しく前向きな大ちゃんプロデュースに新作の面白さは約束されたようなものです。前編が付く第3巻が12月17日にリリースされる予定ですよ。後編は3月リリースのようです。

 とにかく同世代でもおそらく僕とは全く違う環境を歩んできた大ちゃん。それなのに一緒にいるとすごく気持ちの良い仲間意識に包まれるのは不思議です。これからもお互い面白いアニメを送り出していくことは第一ですが、それ以上に自分たちも面白がって楽しめる時間を味わっていきましょうね。そう、お互いにご自愛を、ですね。