• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民192人目
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  • 2013.06.27

 今週のアニ民は声優の故 内海賢二さんです。あまりに長いお付き合いでいつ書かせてもらおうかな、なんて機会をうかがっている間にこんな文字が付くことになってしまいました。

 業界の大御所である内海さん、もちろん同業役者の方々がネットなどにも実に多くを語っています。それもすべてが人物としての敬意であり父親みたいな大きさについてです。全く同感でありながら、立場上声優たちとは違うフィールドにいる僕に対しては、内海さんはちょっと違う面を見せてくれてたのかもしれません。

 初めてお会いしたのはおそらくどこかの宴会の席だったように思いますが、単なるご挨拶程度、でもお噂というか武勇伝というかさんざん聞かされてたのですごく緊張してた記憶があります。その後1998年公開の「名探偵コナン 14番目の標的(ターゲット)」で宍戸永明という容疑者の一人を演じてもらい、そのアフレコ後の打ち上げでかなりお話させてもらいました。

 声を演じていらしたスティーヴ・マックイーンのお話も最高でしたが、当時ありそうであまりなかったのが役者でありながらプロダクションの社長を続けることです。ご自分が経営する「賢プロダクション」には自分も含めて役者=人間の集団、仲間意識みたいなことをすごく大切にされてるお話が印象に残ってます。近くであの声で聞かせてもらってたのもあるのですが。

 ずっとお付き合いしてる神谷明さん(アニ民12)からも内海さんのお話はよく聞いてました。なんにせケンシロウとラオウですからね。役者同士、演技で張り合うのはもちろんですが、なんというかスピリチャルな面でのライバルといったニュアンスが強く感じられましたよね。今思えばその番組収録シーンに一度でもお伺いしたかったなあ。

 いつも笑顔ですわちゃんって言って握手をしてくれた内海さん。その声量や発声についてはもうここで僕が言うことは何も無いんですが、僕はいつでも内海さんの声をなぜか“メタル声”みたいに心で表現して聞いていました。たとえば喉の奥に金属板が仕込んであり、その滑らかに輝く表面があのハリのある声を生み出す、そんなイメージなんです。それが内海さんと言う人間力に通じるているようにも思っていました。

 お通夜にお伺いした青山葬儀場には顔見知りも多く、みな内海さんのいろんなキャラクターの声や面影をそれぞれにまとって並んでいました。そして祭壇には数えきれないほどのきれいな白い花にかこまれた、白いウエスタン衣装も凛々しい内海さんがいました。

 思えば内海さんが演じたキャラクターには(王・ボス・悪魔・大・土・黒・源・船長・神)などスケールが大きいか根っこのどっしりした名前がついていることが多いですよね。キャラクターの漢字イメージで内海さんがキャスティングされたこともあるのしょう、でもそれってちょっとすごい。遺作となった役が「銀の匙」の轟先生、ってなんかまんまだし。

 現在「賢プロダクション」をしっかり支えているのがご子息の内海賢太郎さんであり奥さんの野村道子さん。今では公私ともにお付き合い、おかげさまで僕もいろんなシーンで賢太郎さんにご一緒してもらってます。内海さんの残した多くの大きなものは彼を中心にしっかりと未来に続いていくことでしょう。「わが生涯に一片の悔いなし!!」内海さんそのものでカッコ良すぎです。大好きでした。享年75歳、謹んでご冥福をお祈りいたします。