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#160「アメリカ/サンタローザ」 8月7(日)午前10:25〜10:55


 今回の配達先はアメリカ・カリフォルニア州・サンタローザ。ここで介助犬訓練士として働く鋒山佐恵さん(27)と、滋賀県に住む父・二三男さん(53)、母・京子さん(53)をつなぐ。日本を飛び出して7年。生活のすべてを介助犬に捧げる娘に、両親は「もうそこそこの年齢。犬もかわいいでしょうが、人間の子もかわいいので…」と、早く結婚して孫の顔を見せてくれる日を待ち望んでいる。

 介助犬とは、事故や病気で手足が不自由になった人を手助けするために、特別な訓練を受けた犬のこと。現在佐恵さんは、介助犬の訓練士を養成するバーギン・ケーナイン大学に通っている。この大学を作ったバーギン校長は、世界で初めて介助犬を育成した人物。彼女の元で最先端の介助犬訓練技術を学びたいと、世界中から生徒が集まってくる。佐恵さんは2年間この大学で訓練士の技術を身につけ、現在は修士課程でさらなる専門知識を学ぶ一方、学生の指導も任されている。

 介助犬には「座れ」「ドアを開けろ」など、コマンドと呼ばれる100ほどの命令を組み合わせ、覚えさせなくてはならない。基礎の授業では仔犬を使ってお座りや伏せなどの教え方を学び、成犬を使った実践的な授業では、スーパーのレジなど、実際の現場を想定して車椅子を使った訓練を行う。佐恵さんはインストラクターとして生徒たちに指導する。「犬たちは褒められるのが大好き。そのために仕事をするんです。だからたくさん褒めてあげるんです」。佐恵さんは教える際のコツをそう語る。

 子供の頃、共働きだった両親に代わり、佐恵さんの面倒を見て可愛がってくれたのは祖父だった。田舎ですくすくと育った佐恵さんは高校卒業後、盲導犬のボランティアをしながら専門学校へ。そこで介助犬の存在を知り、本場で学ぼうと、7年前にアメリカへ渡った。今は犬好きのホストファミリーの家に間借りしている佐恵さん。家事を手伝うことで家賃と食費はタダ、大学の授業料もインストラクターをしているので免除という、とても恵まれた環境の中で学んでいる。この大学に来て5年。いまではバーキン校長がもっとも信頼するスタッフに成長した。

 両親が心配する結婚については「いずれは私が育ったような家族を作りたい。でも私にしかできないことをするには、今やらなければいけないことがあると思う」と、佐恵さん。そんな娘の言葉に、両親は「結婚はまだ無理そうですね…」と少々諦め顔だ。

 そんな佐恵さんが今一番力を入れていることがある。犯罪を起こした少女たちの社会復帰のための更生プログラムとして、介助犬訓練士の授業が行われており、佐恵さんはその指導もしているのだ。「ドッグトレーニングを通して青少年にさらに良い人生を生きてもらう…いま一番興味があることです。それを日本でもやってみたい」と、佐恵さんの夢は広がる。

 そんな佐恵さんに日本の家族から届けられたのは、5年前に亡くなった祖父が生前に作ったひょうたんの飾り。そこには父が描いた犬の絵と、家族からのメッセージが添えられていた。佐恵さんは「たくさんの人に助けられたここまで来られた。これからはたくさんの人に恵みを与えられる人になりたい。それを教えてくれたのは家族です」と、日本で見守ってくれている家族に感謝する。