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#105「パラオ」 5月23日(日) 午前10:25~10:55


 今回のお届け先は南太平洋のパラオ共和国。ここで海洋生物研究家として活動する坂上治郎さん(43)と、千葉県流山市に住む父・靖朗さん(74)、母・氏子さん(69)をつなぐ。日本を離れて10年。結婚や堅実な生活には見向きもせず、子供の頃から大好きだった海洋生物の研究の道を選んだ治郎さん。両親は「日本に帰って来て、落ち着いてほしい…」と言いながらも、今では諦め気味だ。

 手つかずの自然が残るパラオの中でも、めったに人が行かないような湿地や川、海へ出かけ、水中に潜って珍しい魚の観察や撮影、採取などの調査を続ける治郎さん。ワニのいる川にも構わず入り、調査に夢中になると、危険も忘れて1日中水の中にいることもあるという。だが、治郎さんは大学や団体に所属せず、個人的に研究活動を続けているため、研究で収入を得ることはほとんどない。ダイビングガイドなどのアルバイトで生計を立てているのが現状だ。現在は独身。かつては恋人もいたそうだが「出て行ってしまいました。こんなことばかりやっているから、皆ついて行けなくなるみたいで…」と苦笑する。

 治郎さんはパラオ政府から魚を捕獲する許可を得ているため、採取した魚は自宅へ持ち帰り、より詳しく研究することができる。魚は標本にして撮影し、さらに顕微鏡でウロコやヒレの数などを細かく計測する。こうしていくつも新種の魚を発見してきた治郎さん。近々また新種の発表をするそうで「詳しく言えませんが…魚類学では今世紀最大の発見になると思います」と、打ち明ける。

 物心ついた頃から、暇さえあれば近所の川へ魚獲りに出かけていた。「父が図鑑や百科事典を揃えてくれ、魚に興味を持つ環境を整えてくれたのがよかった」と治郎さんは振り返る。大学では水産学を学び、一度はサラリーマンとして働いたものの、魚への情熱を抑えることが出来ず、10年前、会社を辞めてパラオにやってきた。

 そして今、治郎さんがもっとも情熱を傾けて調査しているのが、謎に満ちた魚イレズミフエダイ。その研究をしているのは世界でも治郎さんただ一人という。1年に数日だけ、10万尾が大群を作って産卵を行うというイレズミフエダイ。6年前から調査を始めた治郎さんは、今年、卵の採取を目指し、独自に産卵の日と場所を割り出した。その日、治郎さんはパラオ南端のペリリュー島沖へとやって来ると、潮の流れの激しい海中へ勢いよく飛び込んだ。すると狙いは的中。10万尾以上ものイレズミフエダイの大群が産卵のために集まっていたのだ。そして産卵が始まると、治郎さんは激しく泳ぎ回る魚を追いかけ、何度も何度も採卵を試みる。そして見事、直径1ミリにも満たない卵を採取することに成功する。持ち帰った卵は24時間で孵化。動き回る稚魚に、治郎さんの顔もほころぶ。その姿は夢中で魚を追っていた幼い頃のままだ。

 そんな治郎さんに父から1冊の本が届く。それは治郎さんが子供の頃、何度も繰り返して読んだ魚類の本だった。そこには「あの頃の気持ちを忘れず、好きなことをトコトンやってみろ」と背中を押す父の想いが込められていた。治郎さんは「小学生の時のバイブルでしたね。これがすべてのきっかけかもしれない。親は分かっているんですね。ちゃんと見ていてくれて、応援してくれているんだと感じます」と感激する。 


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