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#084「カンボジア」 12月13日(日) 午前10:25〜10:55


今回の配達先はカンボジア・シェムリアップ。この地で孤児院の院長として奮闘するメアス博子さん(35)と、和歌山県に住む父・平一さん(72)、姉・紀子さん(39)をつなぐ。3年前、ずっと支えてくれていた最愛の母・綾子さん(享年60)を亡くした博子さん。父は「娘の一番の理解者だった。娘がつらい時期を乗り越えられたのも家内がいたからだった。母親を失って大変やったやろうと思う」と遠く離れた娘を気遣う。

 16年前まで続いた内戦の影響で、現在カンボジア国内にいる孤児はおよそ40万人。最近では貧困などで育児放棄された子供も増加し、大きな社会問題になっている。カンボジア人の夫と10年前に結婚し、現地に移り住んだ博子さんは、以来、夫が11年前に設立した孤児院の院長を務めることに。夫は今、首都プノンペンで働いているため、11才の長男と、29人の子供たちと共に暮らしながら、院の運営管理を取り仕切っている。スタッフはすべてカンボジア人。現在は資金の6割を日本からの支援金に頼っているが、ゆくゆくは自立した運営を目ざし、スタッフや子供たちに養鶏や農業の指導をするなど、さまざまな取り組みを行っている。

 この院のルールは掃除や洗濯など身の回りのことは自分ですること。子供たちの自主性を育てるのがモットーだ。交通事故で両親を亡くした幼い3兄弟や、学校をサボりがちで心を閉ざす少年など、彼らのお母さん代わりとなって共に悩み喜び、一人一人とまっすぐに向き合う博子さん。多感な子供たちの悩みを解決するのも博子さんの役目だ。

 そんな「人との関係を大事にして、真摯に対応すること」を教えてくれたのは亡き母だった。「母の教えを体験的に分かっていったのがこの孤児院だった。"私、頑張ったよ"というのを母に見せたかった」と惜しむ博子さん。親を亡くした子供たちの気持ちを本当に理解できるようになったのも、母を亡くしてからだという。「親を亡くすってこういう事なんだと初めて分かった。そのことすらも母は自らの死で私に教えてくれたのだと思います」。そんな風に語る娘を、父は「家内がいれば愚痴も聞いてやれたのに…私には泣き言も言ったことがないんです」と少し寂しそうだ。

最愛の母を亡くし、心の拠り所を失いながらもカンボジアで頑張る娘を、遠く日本で心配する父。そんな父から娘へ、お茶の先生をしていた母がずっと使っていた茶碗が届けられる。そこには「お母さんをいつもそばに感じてほしい」という想いが込められていた。博子さんは「お父さんはいてくれるだけでいい。母が亡くなったときにそう思った。同じ時間はなかなか共有できないけど、いつまでも元気でいて欲しい」と、これまで伝えられなかった父への想いを語る。