【記者メモ】統合型リゾート「IR」大阪経済の“起爆剤”として期待されるも…去年の年末から問題が続出 そのウラガワには一体何が?

日々、様々なニュースと向き合い、最前線で取材を続ける報道記者たち…。現場を走り抜け、書き溜めてきた【取材メモ】から見えてきたものとは。
大阪経済の起爆剤として期待されていたカジノを含む統合型リゾート「IR」。そもそもタイトだった工事計画に、新型コロナの影響が直撃…。先月、府と市は2029年の開業を目指すと明らかにしました。その結果、2027年にIRの開業を目指す和歌山にも先を越される形となり、建設地の土壌対策費としてインフラ整備費用の増加も次々明らかに…。去年の年末から問題が続出する大阪のIR事業。そのウラガワには一体何が?

大阪IR開業までのスケジュール

Q.当初のスケジュールからコロナの影響もあって大きく先送りになっていますね。
(福島記者)
「大阪の統合型リゾートIRは、もともと2025年に大阪関西万博と同時に開業することで、相乗効果を生むということだったのですが、 今は2029年の開業を目指すということになっていて、新型コロナの影響によっては『さらに1年から3年程度遅れることもある』となっています。
これは事業者側の強い意向なのですが、そこには大阪府市のIR業者への“配慮”が垣間見えます。今回このIR事業に応募してきたのがMGMオリックス連合の一つだけだったのです。夢洲は大阪市だけで三千億円投資しているところで、負の遺産とも呼ばれているのですが、大阪府市としては、何としてもMGMオリックス連合は逃げてほしくないという思いから、どうしても事業者側の意向に沿うような形になってしまっています。」

空席目立つ住民説明会の様子

Q.住民説明会はどのような雰囲気でしたか?
(福島記者)
「住民説明会に来ているのは、とても関心のある人たちだと思うのですが、100人の枠があったのに半分くらいしか来ていないという状況で、大阪経済の将来を左右するという大きな事業の割には関心が高くないなという印象を受けました。」

夢洲インフラ整備膨らむ費用

Q.どういった質問が多くありましたか?
(福島記者)
「やはり事業費の増加についての質問が多くありました。大きく3つあるうちで、特に大きな核である土壌対策費です。建設予定地からヒ素やフッ素が検出されたり、液状化対策が必要になったりで、新たに790億円増えるということです。これは大阪市が負担するということなのですが、松井市長は『大阪市民に負担はかけない』という言い方をしています。」

Q.ということは税金を使わないということですか?
(福島記者)
「今回、夢洲の土地をIRの事業者に貸し出すという形なので。毎年賃料が入ってきて、総額で880億円程なのですが、それで790億円を賄うという形をとります。税金を使うというわけではないのですが、賃料の収入も大阪市民の資産ですので、市民に負担はかけないというのは苦しい説明かなと思います。」

Q.これ以上費用は膨らまないのでしょうか?
(福島記者)
「専門家に取材しますと、『そもそも夢洲はIRのような大きな建物を建てるような想定で埋め立てられていない。深い地層で地盤沈下が何十年もかけて起き、今後対策費用が増える可能性がある。』と話しています。」

Q.費用の増えた分はだれが払うのでしょうか?
(福島記者)
「基本的には行政や国が払うということになっています。IR業者も202億円程度は払うということになっているのですが、それを増やすという話は出ていません。これもIR業者に対する“配慮”と見られています。」

大阪IRの経済効果の見込み

Q.経済の大きな起爆剤として期待されているわけですが、今後のスケジュールは?
(福島記者)
「まずは経済効果ですが、売り上げが年間5200億円でディズニーランドを運営するオリエンタルランドと同等ということで、かなり大きい額です。経済効果は毎年1兆1400億円ということです。その算出方法ですが、まず一定程度コロナは終息しているという前提で、業者が出してきた数字をもとにはじき出したということで、それ以上の詳しい情報は開示されていない状態です。リターンがどれくらいあるかがこのIR においては一番重要なところなので、そこをもう少し丁寧に説明してほしいと思います。」

大阪IR今後の流れ

Q.そして予定ですが…
(福島記者)
「2022年の2月に大阪府議会と市会で審議しまして、承認されれば4月に国に申請して、夏ごろに最大3か所が決定されます。大阪以外に和歌山や長崎が手を挙げています。」

Q.今後どんなことが必要と感じますか?

(福島記者)
「取材して思ったのは、スケジュールありきで進んでいるのではないかということで、これだけ大きな事業ですから、府民・市民への説明をするということが大切だと感じています。」

府民・市民への説明不足

今後も説明会、公聴会が予定されていますが、耳の痛い話も含めてしっかりと、丁寧に議論を積み重ねていただきたいと思います。

(「かんさい情報ネットten.」2022年1月19日放送)

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