忍者から最先端ゴミ箱まで…観光客が殺到する秋の京都、オーバーツーリズム対策に悪戦苦闘する古都の今を追う【かんさい情報ネット ten.特集】

秋の京都では紅葉を求めて多くの観光客が国内外から訪れます。その中で問題となっているのが、観光公害いわゆる「オーバーツーリズム」です。交通機関の混雑やゴミ問題など課題は山積みですが、京都市では様々な対策が行われていました。しかし、有効活用されていない現状も。試行錯誤が続く京都の今を取材しました。

【特集】秘策は「忍者」と「スマートゴミ箱」⁉ 秋の観光シーズンで京都が抱える“オーバーツーリズム”問題 悪戦苦闘する古都の対策と課題

観光地を悩ます「オーバーツーリズム」問題

 古都・京都に、秋の観光シーズンが到来。美しい景色を求めて、国内外から多くの観光客が訪れます。しかし、コロナ禍前から“観光公害”、いわゆる「オーバーツーリズム」が課題となってきました。5類移行後、初めての秋を迎え、どうなっているのか―現状を取材しました。

「忍者」に「乗り合いタクシー」…さまざまな対策で混雑緩和狙う交通機関

平日の昼間、人で溢れかえるホーム

 観光地・嵐山の玄関口、JR嵯峨嵐山駅。平日の昼間にもかかわらず、電車が到着すると、たちまちホームはいっぱいになりました。

(嵯峨嵐山駅の周辺住民)
「前より、だいぶ増えています。お客さんも、混雑も」

 これから紅葉シーズンが本格化すると、駅のホームに人がたまり、危険な状態になる恐れもあります。

観光客が“降りてくる車両”と“降りてこない車両”が

 ただ、JR嵯峨野線の混雑には、“ある傾向”が。同じ電車の中に、観光客が“降りてくる車両”と“誰も降りてこない車両”があるのです。実は、JR京都駅の嵯峨野線は行き止まり式のホームになっており、乗りやすい手前の車両に乗客が集中してしまっているのです。

忍者で「空いている車両」へ誘導狙うも…

 そこで、車両ごとの混雑の偏りをなくそうと登場したのが、“忍者”です。2023年9月から、外国人観光客に大人気の「忍者の人形」を京都駅のホームに設置し、一緒に記念撮影するよう促すことで、空いている奥の車両へ誘導しようとする試みです。

 しかし、取材中、写真撮影している外国人観光客らしき姿は見られず…。今後、効果は出るのでしょうか。

市バス乗り場には長蛇の列

 他にも、市民が悩まされてきたのが、観光客による市バスの混雑です。秋の3連休の初日に取材すると、京都駅前のバス乗り場には、長蛇の列ができていました。

 しかし、意外にもスムーズに列は流れ、積み残しもなく、バスは出発していきました。

「観光急行」を15分間隔で運行

 京都市交通局は、秋の観光シーズンの土日祝日に、京都駅~清水寺間の臨時急行バスを15分間隔で運行。地元住民と観光客の利用するバスを分けることで、混雑緩和を図っています。

タクシー業界は「運転手不足」で苦戦

 一方、乗り場の混雑などに頭を悩ましているのが、京都のタクシー業界です。背景にあるのは、運転手不足。コロナ禍の3年間で約1800人の運転手が離職し、2割ほど減少したといいます。

(京都府タクシー協会・筒井基好会長)
「売り上げがない中、外に出る仕事、人と接する仕事の不安の中、辞めていかれた方は多かったと思います」

通常タクシーより安い「乗り合いタクシー」を試験的に運行

 運転手不足と乗り場の混雑両方を解決するために導入したのが、9人乗りの「乗り合いタクシー」です。9月末から、京都駅から金閣寺に向かう乗り合いタクシーを試験的に運行していて、通常のタクシーでは3500円程度かかるところ、「おとな1人2000円」です。

(乗り合いタクシーの利用客)
「京都に来るのは3回目ですけど、金閣寺に行くのが初めてで。バスの乗り場もよくわからないし、人もちょっと多かったので」

Q.ジャンボタクシーで移動できるのは、どうですか?
(乗り合いタクシーの利用客)
「乗り心地は良いです」

 しかし、試験運行を始めてから約1か月。一便当たり1人程度の利用に留まっています。

(筒井会長)
「お客さまへの周知が足りないと思いましたので、しっかり知っていただくこと。これが一番の課題かなと思っています」

観光地の住民悩ます「ゴミ問題」 “スマートゴミ箱”導入も課題山積

観光客が道端に捨てるゴミに辟易

 また、交通機関の混雑と並んで地元住民を悩ませているのが、ゴミの問題です。嵐山で米を販売している店では、長年、“ポイ捨て”に悩まされてきたといいます。

(米のおかべ・岡部芳治店主)
「テイクアウトで食べたものを捨てる場所を探して、うろうろしている。うちの場合は、自動販売機の前にゴミ箱を3つ置いていますので、そこへ捨てる。あふれてきたら、見た人がその周辺に捨てるという」

竹林の小径に設置された「スマートゴミ箱」

 2023年から京都市が、嵐山の名所・竹林の小径に高性能な「スマートゴミ箱」を設置しました。自動でゴミを圧縮し、1台でゴミ箱4~5台分の役割を果たします。しかし…。

処理しきれず、溢れ出るゴミ…

(読売テレビ・藤枝望音記者)
「スマートゴミ箱から、ゴミがあふれ出しています」

 スマートゴミ箱でも、週末の夕方には、この有り様に…。辺りに悪臭が漂います。ゴミ箱がいっぱいになると市の担当者にメールで通知される仕組みですが、この場所は日中、車両の通行が規制されるため、回収することができません。

新しい文化「食べ歩き」に悩み

(嵐山商店街・石川恵介会長)
「ゴミが出ない町が一番良いんですけど、今や食べ歩きも文化になっていますし、難しいです」

 試行錯誤が続く、京都のオーバーツーリズム対策。「観光客の受け入れ」と「地元住民の生活」が両立できる日は、果たして来るのでしょうか。

(「かんさい情報ネットten.」2023年11月16日放送)

ホームページ上に掲載された番組に関わる全ての情報は放送日現在のものです。あらかじめご了承ください。

過去の放送内容