1月19日(水)
【記者メモ】「津波≠地震」地震が起きずとも津波はやってくる…トンガ付近の海底火山噴火から“教訓とすべき”ポイントとは
日々、様々なニュースと向き合い、最前線で取材を続ける報道記者たち…。現場を走り抜け、書き溜めてきた【取材メモ】から見えてきたものとは。
トンガ付近で発生した大規模な火山の噴火。実は、トンガで起きたような海底火山の噴火は日本近海でも起こる可能性があります。津波注意報出なくとも、避難指示が出なくとも、地震が起きずとも“津波は来る!”
島国日本に住む我々が教訓とすべきポイントとは。

左:中谷しのぶアナウンサー、右:小川典雅記者(読売テレビ)
Q.今回、気象庁は当初『津波の心配はない』と発表したものの、日本でも潮位の上昇が確認され、深夜だったこともあり混乱しましたね
(小川記者)
「かなり混乱したという事でその後、気象庁長官の会見が開かれました。その理由は、『津波≠地震:津波イコール地震ではない』という事です。従来『地震があってから津波が来る』という認識の方が多いと思うのですが、今回は地震もなかった。最初の段階では、津波注意報や警報も出ていなかった。自治体からの避難の情報も出ていなかった。にもかかわらず潮位の上昇が起きたという事で、かなり混乱したと思います。では、どうして潮位の上昇が起きたのか、その理由は“衝撃波”です。」

すぐに結びつかなかった「噴火」と「潮位上昇」
(小川記者)
「最初に噴火したとき、気象庁は遠いということで“注意報”を見送ったのですが、その後潮位の上昇が確認されていきます。噴火の衝撃波が非常に大きく、その空気の振動で潮位の上昇が起きていたのですが、気象庁の担当者は、『何かおかしいな』というのは感じたらしいのですが、これが噴火に結び付いているものだとは考えていなかったそうです。」
Q.その後、潮位は1.2mまで上昇したんですよね?
(小川記者)
「この“1.2m”というのは、津波の警報を出す基準にあたります。非常に危険です。1.2mを観測した、奄美市の災害担当者に話を聞いたところ、土曜日の夜だったので家にいたそうなのですが、テレビやスマホのプッシュ通知で津波を知って、急いで市役所に集まり対応に追われた、ということです。今回は浸水の被害はなかったのですが、もっと大きな潮位変動だったら怖かった、という話をしていました。」

津波の高さと死亡率
Q.実際にこの“1.2m”で予想される被害というのは、どの位のものなのでしょうか?
(小川記者)
「身長170cmの人で、腰の高さくらいの100cmまで浸水したら、『死亡率100%』と言われています。膝くらいの50cmの高さでも、車などが押し流されるので、かなり危険なものとなります。実際の津波を再現した実験では、60cmの津波の水圧で、大人の男性が立っていられない状態になりました。」

60cmの津波実験 水圧で男性が立っていられない状態に
(小川記者)
「実際にはこの水圧に加え、がれきなどを巻き上げながら流れて来ますので、中に金属片やガラスのかけらなどが入った状態になります。“1m”と聞いて『全然大丈夫だな』と思うかもしれませんが、実は非常に危険なのです。」

日本近海の火山にも注意が必要
Q.この潮位の変化は予測が難しいということですが、日本も島国ということで、トンガと共通点はありますよね?
(小川記者)
「日本とトンガは島国というだけではなく、『プレートの境目にある』というところも似ていて、海側のプレートが陸側のプレートに沈み込んでおり、非常にマグマがたまりやすいのです。海底火山の噴火がいつ起きてもおかしくない状態である一方で、海底には観測機器が置かれていないので、『前兆を捉えるのが非常に難しい』と専門家は言っています。」

「大規模噴火=津波」の可能性を意識することが必要
Q.今回、潮位の変化は観測できたわけですが、今後の情報の出し方はどうなるのでしょうか?
(小川記者)
「気象庁も会見で、『今までは地震の際の津波情報は出していたが、今後は噴火に伴う潮位変化の情報のあり方も検討していく』という話をしていました。ですが、そのシステムができるまでには時間がかかるかもしれませんので、皆さんには今回のことを教訓に、『大きな噴火が起きたときには “津波”や“潮位上昇”が来るかもしれない、避難しなければいけない』ということを、強く意識していただきたいと思います。」
(「かんさい情報ネットten.」2022年1月19日放送)
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