【南海トラフ】可能性高まる巨大地震…要警戒時に発表される「臨時情報」とは?

 1月22日未明に発生し、最大震度5強を記録した日向灘沖地震。震源地が南海トラフ巨大地震の想定震源エリア内だったため緊張が走ったが、専門家の判断は「南海トラフとは関係がない」…果たしてその根拠は?そして、40年以内に発生する可能性「約90%」と言われている巨大地震。その可能性が高まったとき、私たちに届く「臨時情報」とはどんなものなのか?私たちができることは?最前線で取材する記者が、解説します。

「南海トラフ巨大地震との関連なし」とされた根拠は?

左:小川典雅記者、右:中谷しのぶアナウンサー(読売テレビ)

 九州の東の沖合で起きた日向灘沖地震は、震源の深さが45km 、地震の規模を表すM(マグニチュード)は6.6。南海トラフ巨大地震の“想定震源域内”で起きたため、その関連性に非常に注目が高まりました。

日向灘沖地震の震源と南海トラフ巨大地震の想定震源域

Q.「南海トラフとは関連がない」と判断されたポイントはどこだったのでしょう?
(小川記者)
「『M6.6』というのが非常に大きなポイントになります。南海トラフ巨大地震と関連があるかないかの“基準”というものがあるのですが、それが『M6.8』です。今回はM6.6だったので、数字上はわずかですが、基準に満たなかったため『関連がない』ということになりました。」

「関連あり」と判断される基準はM6.8以上

Q.この“0.2”の差をどう解釈すればいいですか?
(小川記者)
「“0.2”と聞くと、差がごくわずかのように聞こえるのですが、Mが0.2違うと、実は地震のエネルギーは“2倍”も違うんです。ですので専門家は、『今回の地震はそこまで大きくない』と話しています。」

南海トラフ巨大地震と日向灘沖地震の発生メカニズムの違い(京都大学防災研究所・山下裕亮教授より)

Qほかにも関連がないと判断された理由はあるのでしょうか。
(小川記者)
「地震発生のメカニズムが違いました。南海トラフでは大陸プレートに海洋プレートが潜り込むようになっていて、その大陸と海洋の境界で起きるのが南海トラフ巨大地震だと言われているのです。今回の日向灘沖地震は、もっと深くの海洋プレートの中で起きていて、プレートの境界とは直接関係がないため、メカニズムの点でも南海トラフ巨大地震とは関連がないと判断されています。」

巨大地震の危険を知らせる「臨時情報」とは?

「臨時情報」の発表パターン

Q.想定震源エリアでM6.8以上だった場合は、 「臨時情報」が発表されるということですが、これはどのようなものなのでしょうか?
(小川記者)
「まずは、発生から5~30分以内に『臨時情報調査中』というのが発表されます。その地震が、南海トラフ巨大地震と関連があるのかどうかを調査し始めました、ということです。実はこの迅速な調査のために、専門家の方は東京の港区にある気象庁にすぐ通える範囲に常駐していて、すぐに駆けつけて判断できるようにしているのです。」

Q.その調査の結果、「巨大地震【警戒】」「巨大地震【注意】」「調査終了」の3パターンになるのですね?
(小川記者)
「関連がなかったという場合は『調査終了』となりますが、気を付けていただきたいのが【警戒】という情報です。これは南海トラフ巨大地震の発生確率が高まっているということですので、太平洋側沿岸の住民の方々や、高齢で避難に時間のかかる方々は、この【警戒】という情報が出たら、すぐに避難を始めてほしい、ということになります。」

Q.私たちが今すべきことは、何でしょうか?
(小川記者)
「今回は“推定震源域”の端の方で起きて、規模も基準には満たなかったのですが、実際に南海トラフ巨大地震の臨時情報は突然出されることもあります。出された後は混乱して水などの物資も手に入り辛くなる状況もあり得ますので、『備えは今から』。すぐに準備を始めていただきたいと思います。」

 今回の地震は九州で発生しました。震源地付近の地域の方々はもちろんですが、実は東海・近畿・四国など、他の地域の方々にも関係する巨大地震に結びつくかもしれない、自分たちの身近なところに影響があるかもしれない、ということを知っておくことが、備えにつながります。今できる備えを、今のうちに確認しておくことが大切です。

(「かんさい情報ネットten.」2022年1月26日放送)

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