【記者解説】第7波への備えに必要なことは? 第6波で死者数が全国最多となった大阪の対応から見えたコト

 各地でお花見シーズンの最盛期を迎え、多くの人でにぎわっています。徐々に“日常”へと近づきつつある一方で、新型コロナの感染者数が徐々に増加傾向にある大阪。今、コロナとどう付き合っていくのかが問われています。「まん延防止」が解除された街から歓迎と不安、両方の声が聞こえる中、取材を続ける読売テレビ・福島達朗記者が解説します。

なぜ大阪が全国死者数最多になったのか

第6波の大阪府の感染者数(週ごとの人数/4月3日現在)

(福島記者)
「まず、最近の大阪府の感染者数の推移ですが、2月前半をピークに減少傾向が続いていました。ただ、直近一週間は、前週比より少し増えている状況です。この下げ止まりの中、一つ懸念としてあるのが『BA.2』というオミクロン株の一種で、今主流のオミクロン株に比べて感染力が約1.2倍強いということです。3月21日~27日までの大阪では、前週の約2倍である約38.5%も『BA.2系統疑い』が検出され、かなりの速度でこの『BA.2』に置き換わっているのではないかと言われています。これが増えてくると、高い数値で下げ止まっている今の時点から感染者数がさらに増えるため、第6波のピーク時を上回るのではないかというのが大方の予想となっています。第6波では、12月17日~4月3日までに亡くなった方の人数は、大阪が全国で最多の1651人で、感染者数の多い東京よりも死者数が増えている状態になっています」

読売テレビ 福島達朗記者

Q.吉村大阪府知事は「大阪は高齢化率も高いが、高齢者と若い人の生活圏が近い、距離感が近い」ということを話していましたが、そこはどうなんでしょうか?
(福島記者)
「実際のデータを見ても、大阪は高齢化率が特段高いとか、3世帯家族が多いというデータはありません。第6波の死者が多い理由としてあげられるのは“リスクが高い人への対応が行き届かない”、“高齢者や基礎疾患のある人への医療が行き届いていなかったのではないか”というところがあると思います」

第6波で急増した施設内感染

(福島記者)
「具体的にみると、高齢者施設でのクラスターが多かったのですが、3月13日時点で610件あり、第4波、第5波と比べても圧倒的に多いのが判ります。今回亡くなった方が元々どこに居たのかを分析しても、やはり施設入所が37%ということで最多になっています」

医療機関による診療ができない状況も…

(福島記者)
「そして、施設で感染された方の約9割が入院できずに、そのまま施設に留まって療養していた、さらにその施設のうちの約2割は医療機関による支援も受けられなかった、ということなんです。その原因として、3600の施設には連携医療機関があるのですが、その約7割は規模が小さい医療機関であることなど様々な理由で“コロナ対応ができない”ということでした。これとは別に、往診してもらえる医療機関を大阪府が100か所設けているのですが、施設の数に対して医療機関の数が見合っていないということなんです。現在、この数をどうしていくのかが、課題になっています」

想定との“ズレ”が生じた大規模医療・療養センター

Q.大阪には大規模医療・療養センターを設けていたと思うのですが、それではカバーできなかったのでしょうか?
(福島記者)
「そこにも想定とのズレがあったと思います。大阪府では約80億円をかけ、1000床を設けていたのですが、この施設にはマックスのときでも70床しか入らなかったということでした。第5波のときは、若い方が重症化するということで、若い方向けにこの施設を作ったのですが、今回は若い方は軽症や無症状が多く、この施設のニーズがなかった。一方で高齢者の重症者が増えて高齢者の行くところがないが、この施設は介護をする人がいないため受け入れられなかった、ということで、需要と供給にかなりズレが生じてしまったということなんです」

Q.このような“介護の場所から動けない患者をどうみるか”ということの備えはどのようにしていけばいいのでしょうか?
(福島記者)
「必要なのは“選択と集中”です。今回は高齢者の方、リスクの高い方、基礎疾患のある方に集中しなくてはいけなかった。これだけ感染者が増えるということが判りましたので、大阪府も第6波の中で徐々に変えてきたりはしているのですが、最初の時点から若い人とリスクの高い人というのをはっきり分けて対応していかないと、増えてきてから対応していては間に合わないということになると思います」

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