8月16日(火)
高齢ドライバーによる交通事故を減らせ!運転中の高齢者の「癖」を最新機器で徹底分析、明らかになった“つもり”の意識
多発する高齢ドライバーによる交通事故。滋賀県では、高齢者に安全な運転を心がけてもらうための取り組みを開催しています。それは、首や足の動きを測定するセンサーを運転者に取り付け、運転中の行動をデータ化することで、自身の運転における「癖」を認識してもらうこと。そしてこのデータの蓄積により、高齢ドライバーに共通する特徴が判明したのです。いったい何だったのでしょうか?さらに、事故を未然に防ぐための車開発の最新技術も紹介します!
【特集】事故多発の高齢ドライバー、運転の「癖」を最新システムで分析!「見たつもり」「止まったつもり」…データで明らかになった“つもり”の実体

高齢ドライバーによる交通事故を減らすために
多発する高齢ドライバーによる交通事故。それを受け、今年5月13日から高齢者の講習に「運転技能検査」が義務づけられるなど、運転免許の更新がより厳しくなりました。さらに今、高齢者の運転を巡って様々な取り組みが行われています。滋賀県警では全国に先駆け、最新の機器を使って運転手の“癖”を分析し、安全運転を心がけてもらうための講習会を、定期的に開催しています。
ドライバーの“癖”を分析、最新システム「オブジェ」

「運転には自信がある」という67歳男性
「近年、全事故に占める高齢ドライバーの事故が年々増加する傾向にあるので、高齢ドライバーの方に自分の運転を見直してもらうという意味で、講習を開催しています」(滋賀県警交通部交通企画課 伊吹貴也課長補佐)
この運転機能講習は、高齢者の運転にどのような特徴があるのかが分析できるということです。今回講習を受けるのは67歳の男性です。
「運転歴は40年以上です。まぁまぁ自信はあります」(受講者の67歳男性)

運転中の行動をデータ化する「オブジェ」
早速、警察官が全部で3つのセンサーを取り付けていきます。1つ目は、これから運転する車体に付け、車の走行位置とスピードを測ります。そして講習者に帽子をかぶってもらい、そこに2つ目のセンサーを取り付け首の動きをチェック。3つ目のセンサーは右足に取り付け、アクセルとブレーキの踏み加減を測定します。これは「オブジェ」と呼ばれるシステムで、運転中の行動をデータ化し、ドライバーの運転パターンを把握することができます。センサー装着後、いよいよ運転スタート。受講者は約20分走って、元の場所に戻ってきました。
Q.いかがでしたか?
「まぁまぁできたかなと思いますけど…」(受講者)

左右の確認時間を表したグラフ
読み取ったデータは、直ちにコンピューターで解析され、本人に報告されます。中央の横線を基準に、上が左方向の確認、下が右方向の確認。折れ線の平らな部分は確認時間の長さを表します。こちらの受講者の場合は…

グラフが尖っている=確認時間が短い
「総合評価はA~Eまであり、Cでした。平均です。グラフに尖っている箇所がありますが、確認時間が長いと線が平らになります。もっとしっかり見ていただければ、もう少し点数がよくなっていたと思います」(警察担当者)

左側をしっかり確認せずに右折していたことが判明
交差点を右折する際の左右の確認では、軽く左側を確認するだけで曲がってしまっていたことが、グラフで一目瞭然になりました。
「横からすり抜けてくるバイクや自転車などの巻き込み事故を防ぐために、しっかり顔を向けて、ミラーと目視で確認していただけたらと思います」(警察担当者)
「普段何気なく運転していて、危険に気が付いていないですね。こうやって見ていただいて、初めて確認できました」(受講者)

75歳の男性、指先で確認しているように見えるが…
続いての受講者は、今回の講習で最高齢の75歳、運転歴50年のドライバー。運転中、指先で確認するものの首は動いていません。さらに、交差点に進入しても、右方向をさほど見ることなく左折しました。結果は…

結果は、交差点進入前の左確認不足
「交差点進入前の左確認不足です」(警察担当者)
「ああ、なるほど。何か動いているようなものに対しては、余計に見るんだけど、それでも見落としますね。あと、止まった“つもり”、この“つもり”が一番怖いんだと思います」(受講者の75歳男性)
今回受講した高齢ドライバーに共通する特徴は、『左右の確認が浅い』ことでした。この特徴は、これまでに受講した360人以上の高齢ドライバーに共通していることだといいます。

滋賀県警の分析官、後藤寛課長補佐
数々の高齢者の事故現場を調査してきた滋賀県警の分析官は、
「高齢ドライバーの事故の特徴として、出会い頭の事故が非常に多いです。これは『オブジェ』の結果と一致していて、左から車が来ていないか、右から来ていないか、というのをしっかり時間をかけて確認することができていないために、事故が起きるということです」(滋賀県警交通部交通企画課 後藤寛課長補佐)
後藤分析官は、今後「オブジェ」でなければ出来ない事故原因の分析を進めていきたいと言います。
「右折の際の巻き込みが、約9割を占めています。なぜ右折の際に事故が多いのか?ドライバーはどこを見ているのか?これを『オブジェ』のデータを基に、分析していこうと思っています」(後藤課長補佐)
運転をサポートするための最新車両改造技術

高齢ドライバー用に車を改造
高齢者が免許を返納する動きも広がる一方で、車を手放せないという人たちも多くいます。そんな高齢ドライバーのために車を改造しているのが、大阪・岸和田市にある「輝自動車工業」です。

手動の補助ブレーキ
「高齢者用に改造した車で、手動の補助ブレーキが付いています。これを押すと、ブレーキがかかります。踏み間違えたりした場合に、視覚的に見えるバーを押すことによって、ブレーキがかかる仕組みになっています」(「輝自動車工業」アダプテーションデザイナー 阪田俊次代表取締役)
本来この工場では、障害者用に車を改造しているのですが、その技術を高齢者用に転用しました。他にも、高齢者の方がハンドルを回すのに手が追い付かない場合に取り付ける、旋回の補助装置などもあります。
「高齢者の事故が起きた後は、問い合わせが極端に増える傾向にあります。後ろを見る鏡やカメラを多用することで、視野を広げてあげる、といった改造は可能になってくると思います」(阪田代表取締役)

滋賀県警交通部交通企画課 伊吹貴也課長補佐
「高齢者ドライバーが関係する死亡事故の統計を取ったところ、約88%が夜間・天候不良・遠距離運転のときに発生しています。高齢者ドライバーの方の事故が一件でも減るように、今後も『オブジェ』の講習を実施していきたいと思います」(滋賀県警交通部交通企画課 伊吹貴也課長補佐)
高齢化が進む日本。今後も、高齢者の事故を減らす取り組みは続きます。
(「かんさい情報ネットten.」 2022年8月16日放送)
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