料理で伝えるウクライナの文化と魅力— 家族を残し避難してきた女性たち、大阪にレストラン開店「ここは小さなウクライナの国」

ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中、避難民が安心して働くことができる場を提供したいと、日本人オーナーがウクライナ料理のレストランを大阪市阿倍野区にオープンしました。調理や接客を担うウクライナの女性たちが提供するのは、こだわりの「家庭料理」。今も祖国に家族を残す彼女たちが、料理に込める思いとは。

【特集】「私がウクライナ人でいられる場所」家族を残し避難してきた女性たち、大阪にレストランを開店—家族で食べていた家庭料理に込める「平和への願い」

平和の願い込めた「ウクライナ料理」

 2023年7月7日、大阪市阿倍野区に、ウクライナ料理のレストランがオープンしました。調理や接客を担うスタッフのほとんどが、ウクライナから避難してきた人々です。ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中、「避難民が、安心して働くことができる場を提供したい」と、日本人のオーナーが開業しました。こだわりの家庭料理に込めた想い、今も祖国に家族を残す女性たちが伝えたいこととは――

「料理を通じてウクライナを好きになってほしい」伝えたい文化と魅力

農業大国・ウクライナが生み出した料理の数々

 大阪市阿倍野区にオープンした「レストラン ウクライナ.ジャパン」で提供されているのは、農業大国・ウクライナが生み出した料理の数々。お祝いの日に作るご馳走から、ウクライナならではの食材を使った家庭料理まで、避難してきた方々が平和への願いを込めて作ります。料理を通じて伝えたいのは、ウクライナの文化と魅力です。

ウクライナのロールキャベツ「ホルブツィ」

 調理も接客も、ウクライナから避難してきた学生や主婦の女性たちが担当します。取材した7月5日は、プレオープンに向けて、準備が進められていました。メニューは、歴史や文化がつまったウクライナの家庭料理にこだわっています。調理場では、首都・キーウから避難してきたユリヤさんが、「ホルブツィ(ウクライナのロールキャベツ)」を作っていました。

キーウから避難してきたユリヤさん

「キャベツの葉の中に、鶏肉・豚肉・牛肉を混ぜたもの、それにお米も入れます。これは、伝統的なウクライナの料理です。おいしい料理を通じて、日本の人たちが私たちの文化を好きになってくれると思いますし、そう願います」(キーウから避難・ユリヤさん)

「本当は帰りたい…でも、どこにも行けない」家族を残して避難…日本で働く理由

異国で働かざるを得なくなった避難民たち

 お店のスタッフのほとんどは、ウクライナに家族を残して、避難してきました。ロシアによるウクライナ侵攻の出口が見えない中、外国で働く必要に迫られています。

オデーサから避難してきたアナスタシアさん

 ウクライナ南部・オデーサから避難してきたアナスタシアさんは、以前日本に住んだことがあり、日本語が得意です。ウクライナから避難してきたのは、2022年12月のことでした。

「戦争が、だんだん酷くなりました。ウクライナでは仕事がなく、良いお給料も貰えなくなり、すごく大変になりました。私はまだ若いので、外国で働いて、両親にお金を送れるから来ました」(オデーサから避難・アナスタシアさん)

キーウから避難してきたスサンナさん

 料理が得意なスサンナさんは、調理を担当しています。アナスタシアさんは語学力、スサンナさんは料理と、得意分野で互いに助け合いながら、お店を切り盛りしています。

「私の家族は、まだキーウにいます。娘、孫、娘の夫、母と父…。本当に毎日心配で、毎日ニュースを見ています。心が痛いです」(キーウから避難・スサンナさん)

お祝いの日の料理「チキン・キーウ」

 2022年9月にキーウから避難してきた、スサンナさん。子どもたちが大好きだったキーウの名物料理「チキン・キーウ」を作りながら、故郷に思いを馳せていました。

「これは、お祝いの日の料理です。子どもが『作って』と言えば、作りますよ。でも基本的には、お祝いの用の料理です。子どもたちは、私の料理が大好きなんですよ」(スサンナさん)

マリウポリから避難してきたリリヤさん

 リリヤさんは、激戦区となったウクライナ南部・マリウポリから避難してきました。経営していたカフェも、家も、ロシア軍の砲撃に遭ったといいます。涙ながらに、つらい心境を語ってくれました。

「とても心が痛いです。祖国に夫を残していますから…言葉にすることが、つらいです。本当は、ウクライナに帰りたいです。でも、どこにも行けないことは分かっています」(マリウポリから避難・リリヤさん)

ウクライナと日本の懸け橋に「ここは小さなウクライナ」

大阪市阿倍野区にある「レストラン ウクライナ.ジャパン」

 いよいよ迎えた、プレオープン。「いらっしゃいませ」と、元気良くお客さんを迎え入れます。次々と運ばれてくる本格的なウクライナ料理の数々に、お客さんたちは舌鼓を打ちます。

キーウから避難してきたオクサナさん

 キーウから避難してきたオクサナさんが、料理を運んできました。日本語で、丁寧に対応します。

「『ビーツのサラダ』です。ビーツとジャガイモとニンジンを茹でて、その下に魚があります」(キーウから避難・オクサナさん)
「おいしい!初めて食べた味です」(お客さん)

「私がウクライナ人でいられる場所」

「レストラン ウクライナ.ジャパン」が最も大切にしていることは、『ウクライナの人たちが、ウクライナ人らしく、日本で生き生きと暮らすことのできる環境』です。

「ここは、“小さなウクライナ”です。ここで、ウクライナ人に戻る感じ」(アナスタシアさん)
「日本に、私たちの文化や料理を広めたいです。ここは、私がウクライナ人でいられる場所。ここで役に立てることが、大切なことなのです」(ユリヤさん)

(「かんさい情報ネットten.」 2023年7月6日放送)

ホームページ上に掲載された番組に関わる全ての情報は放送日現在のものです。あらかじめご了承ください。

過去の放送内容