【ytvSDGs×国循】
循環器病のエキスパートが贈る「健康への提言」vol.2
Vol.2 持続可能な健康へ・・・食生活と体の関係を徹底分析
心筋梗塞あるいは脳梗塞などのいわゆる血管合併症を招く危険因子ですが、高血圧・コレステロール・糖尿病・喫煙があります。それらが重なれば重なるほど危険度が高まります。したがってこの一つ一つを減らしていくということが大事になっていくわけです。
また、高脂血症、高血糖尿病などの生活習慣病も共通です。これらを放っておかれる方もかなりいらっしゃいますが、なぜ放っておくかというと、気付きにくい、別に痛くもかゆくもない。起こるときは心筋梗塞になるか脳梗塞なるかそのように急激起こりますから、それまでは症状がないわけです。もう一つは合併症を招きやすい。放っておくとさまざまな合併症、特に心血管の合併症が起こるということが共通しています。さらに共通しているのは、運動不足と食生活、この二つの乱れが起こしますので、結果としていくつも重なりやすいという点。危険度が非常に高くなるということになります。
生活習慣病になるリスクファクターは不適切な生活習慣です。「5大生活習慣(悪い生活習慣)」とは、「運動不足」「食べ過ぎ・塩分の取りすぎ」「喫煙」「飲酒」「ストレス」です。私も飲酒をしますが、飲みすぎは良くないということになります。
生活習慣病の予防、まずは食事療法です。食事療法の一つの目的は内臓脂肪の蓄積を是正するためです。内臓脂肪というのは皮下組織の脂肪の蓄積ではなくて、内臓にたまる脂肪です。これを一番反映するのが腹囲です。皆さん、最近検診では腹囲を測られると思いますが、これは間接的に内臓脂肪を測っているわけです。なぜ内臓脂肪が悪いかというと、内臓脂肪からいろいろなホルモンが出ます。そのホルモンが高血圧あるいは、高脂血症のような生活習慣病を引き起こす、その共通のベースになるからです。
自分にとって適切なカロリー(エネルギー摂取量)はどのくらいかということを頭に入れておく必要があります。検診の結果を見ると標準体重が書かれていると思います。その標準体重あたりに労作、軽労作、普通労作、重労作、それに従ってどのくらいのカロリー数を取ったらいいかということが分かります。一度これを計算してみてください。
と言ってもなかなか計算するのは大変なので、簡単に言うと、腹7分目あるいは腹8分目ということが大切になってきます。少なくともお腹いっぱい食べないこと、食べた後ラーメンとか締めのラーメンとか行かない…そういうことになります。それからなるべく規則正しい生活(食事)をすること、食事の時はゆっくりとよく噛んでということになります。
もう一つの食事療法の目的は、血圧の管理です。塩分をとればとるほど血圧が上がります。また、体重が上昇すればするほど血圧が上がることが多いです。今、日本人は大体一日平均11gから12g食塩をとっておりますけれども、これを約半分にすることが推奨されています。また、摂取カロリーを減らして腹7分目にして、肥満をなくすと、血圧が下がることが多いです。全員が下がるとは言いませんけども、下がることが多いということになります。
この「塩分を減らす」ということですが、皆さん病院に入られて、減塩食を食べたことがあるかもしれません。なかなか美味しくないですね。それを美味しくするため 国立循環器病研究センターの栄養士たちがその塩分を減らしたことによるおいしさの減少を、日本古来、関西のだし風味を使って補う「かるしおレシピ」を作りました。レシピ本もありますのでぜひ参考にしてください。我々の進める「かるしお」運動に参画していただく企業に対して、国循が使用認定をし、その製品が今どんどん売れています。
次に、高脂血症、高コレステロール血症、高中性脂肪血症を食事療法でどのように治していくかということですけれども、やはり一番はカロリーを適正にとるということです。高コレステロール血症の場合は、コレステロールをたくさん含む食品を控える、食物繊維を含む食品をふんだんに摂取することが必要となります。高中性脂肪血症はアルコールと肥満によって上昇しますので、アルコールを少し控えていただくこと、そして糖分を控えることが重要になってきます。
特に、高コレステロール血症に対しては、食事療法が著効します。コレステロールが多いものは「卵」「内臓」「肉の脂身」などになります。「卵」については、鶏卵は気を付けて食べている方が多いと思うのですが、タラコなどの魚卵も同じようにコレステロール値を上げるので注意したいです。また「内臓」については、よくあるのはちりめんじゃこです。骨粗しょう症を防ぐために毎朝食べる方がいらっしゃいますが、じゃこは内臓を取り除くわけにいかないので、それによってコレステロールが上がってしまうので注意です。
もう一つ注意すべきものとして、乳製品、特にヨーグルトです。健康に良いので家でヨーグルトを作ろうというテレビ番組がありますと、コレステロール値が上がる人が非常に多くなることがあります。また、牛乳、卵の両方が含まれている洋菓子類、ケーキ、クッキー、バニラアイスクリームなどはコレステロール値を増やします。また盲点として、本来、植物性の脂肪はコレステロールを上げないのですが、例外となるのがチョコレートです。働き盛りの人は夕方おなかがすくので机の引き出しにチョコレートを入れている方も多いかと思います。これを一粒、毎日食べるとコレステロール値が数十上がることがよくあります。その辺もよく注意していただければと思います。
生活習慣病の予防、続いては運動療法です。運動療法がなぜいいのかというと、運動すると内皮の機能が良くなる、そして血管が拡張しますので血圧を下げます。それから肥満防止につながります。普通の運動ではなかなか肥満を抑制することができませんが、代謝を良くすることによって間接的に肥満抑制につながります。
どの位の運動をしたらいいのかというと、一日30分ぐらいの運動、毎日する必要はありません。いろいろな研究で2日に一度で良いと言われています。30分から60分間、往復の通勤で歩かれている場合、それプラス土日に一回一時間ほど歩くことで最低限の運動が確保されるわけです。
どういう運動かというとやはり有酸素運動、歩行が一番良いです。その他にサイクリング、ラジオ体操、水中ウォーキング、特に膝の悪い方には、水中ウォーキングあるいはサイクリングが適しています。競争など、力むような運動はこの目的に関しては、適さないということになります。
したがって、ジムへ行くのは難しくても、一つ前の駅で降りて歩くとか、エレベーターに乗らず階段を利用する、そういうことで運動を皆さんの生活の中に取り入れていただければと思います。
最後にタバコです。これは全く良いことがありません。リスクファクトを2倍にします。高コレステロールでも高血圧でも全くない方の心筋梗塞の発症率が、タバコを吸うだけで二倍になります。高コレステロールか高血圧のどちらかがある人は、何も無い人がタバコを吸ったのと同じぐらいですけども、この方がタバコを吸うとまた倍になります。高コレステロール血症と高血圧のある方はそれと大体同じぐらいのレベルの危険度ですが、これにタバコを吸うとまた倍になるということで、喫煙は循環器病の敵です。ガンにおいても同じなので、できればタバコはやめて頂ければと思います。
ということで、まず生活習慣を変えて、生活習慣病にならないようにする。それから生活習慣病を治療して脳卒中や心臓疾患にならないようにする。一旦、心臓疾患あるいは脳卒中になれば治療していわゆる難治性心不全にならないようにすることが大切です。