2020年4月の「新聞用語懇談会放送分科会」は「新型コロナウイルス」の蔓延によって、会議が中止になりました。しかし、緊急に話し合いたい議題に関しては、メールで意見交換を行いました。私からは、
「当面の間」
という言葉について質問しました。
『「当面の間」という表現がよく出て来ます。これは「当面」と「当分の間」の混交表現だと思われますが、直しますか。直すとしたら、どう直しますか。
これに関しては、NHK放送文化研究所のサイトに、吉沢信さんが2012年9月号の『放送研究と調査』に書かれた「当面(の間)」が掲載されています。それによると、2011年の東日本大震災に際して「当面の間」という言葉が、NHKのニュースや行政の文書でもよく使われ、吉沢さんは「原発事故対応やがれきの受け入れ、高台への移転などを考えると『当面』より長く、『当分』より短い印象を与える『当面の間』が多用されたのではないか」と分析されています。』
これに関する各社の意見は以下の通りです。
(フジテレビ)特に直していない。敢えて言い換えるなら、「状況が(大きく)変わらない限り」などいかがだろうか。
(テレビ朝日)特にルール化していないが、「当面」と表現することが多い。
(日本テレビ)意味が変わらないため、許容の範囲内と考える。実際にこの類いの期間を示す言葉(例:「二週間の間」など)は原稿で結構出てくるが「許容」というコンセンサスをとってアナウンスしている。
(テレビ東京)データベースでは、「当面の間」=150件、「当分の間」=97件だった。
※コロナ後で比べると圧倒的に「当面の間」だが、引用で使ってしまっていたり、そもそも混交表現と知らなかったりする人が多いと思われる。用語委員の間では「当分の間」とした方がいいという認識だ。
(共同通信)「当面の間」は使っている。
(時事通信)5年間で300以上の記事が検索できた。直すルールはないが、私が担当だったら「当面」に直す。NHKの分析はなるほど、と感じた。
(毎日放送)長さでいうとどれも「かなり長い間」で、特に使い分けはない。「当面」「当面の間」「当分の間」いずれも使う。
というような意見が寄せられました。
(2020、4、24)
もお読みください。
(2020、5、27)


