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#135「アメリカ/テキサス」 1月23日(日) 午前10:25〜10:55


 今回のお届け先は、牧畜が盛んで、カウボーイ文化が今も生き続けるアメリカ・テキサス。ここでの生活必需品ともいえる、馬に乗るための鞍・サドルを作るサドル職人の川村俊彦さん(52)と、東京に住む父・正俊さん(84)、弟・和彦さん(49)をつなぐ。仕事の傍ら、シングルファザーとしても奮闘する息子を、父は「遠くに離れていてなかなか行くことができないが、健康でさえいてくれたら…」と心配している。

 牧畜やロデオ、投げ縄など、馬と共に生きるカウボーイにとって、一生使い続けるサドルは財産ともいえる。その革には伝統的に美しい唐草模様が刻まれており、そのデザインにはみな強いこだわりを持っているという。俊彦さんの仕事は、そんな模様を革に描き出すこと。さまざまな工具を使って革に模様を叩き出したり、カッターで美しい曲線を描いたり、立体的にも見える見事な唐草模様を描いていく。そんな俊彦さんの繊細な技術は、本場テキサスでも高く評価されているのだ。実は本場のアメリカでも彼のような“叩き屋”は少なくなってきており、「次の世代を育てないと、本当にいなくなってしまう」と危惧する俊彦さんは、日本人ながら、今では若手職人を育てる役目も果たしている。

 子供の頃に買ってもらったおもちゃのガンベルトが、俊彦さんのサドル職人としてのスタートだった。「自分でそれにナイフで傷をつけたり、マイナスドライバーや釘を金槌で叩いて模様をつけていた」と俊彦さんは振り返る。その後、趣味でさまざまな革製品を作るうちに出会ったのがサドル。革製品の中でももっとも作り方が複雑といわれるサドル作りに魅了された俊彦さんは、33歳のときに手作りしたサドルひとつを抱え、本場テキサスで自分の腕を売り込んだのだ。そして2年後、日本での仕事を辞め、35歳で本格的に移住。以来、様々な革製品を作り続けた俊彦さんは、その卓越した技術で、本場でも認められる職人になったのだ。

 そんな俊彦さんは14歳の一人息子を男手ひとつで育てるシングルファザーでもある。仕事の傍ら、朝5時に起き、食事の支度から始まり、家事の一切をこなしている。離婚したのは10年前。慣れない子育てと仕事の両立で苦労していたとき、日本から飛んできてくれたのが母だった。1年に6回も渡米して、家事や子育てを助けてくれたという。およそ5年間に渡って日本とテキサスを行き来し、俊彦さんと孫にあたるケビン君を支えてくれた母も、2年前に他界。ケビン君にとっては母親代わりだっただけに「料理や日本語など、いろんなことを教えてくれた。亡くなったときはすごく悲しかった」とケビン君は話す。

 「喧嘩もよくしたけど、2ヶ月に1度、1年に6回も母はよく来てくれたと思う。本当に助かった」と、俊彦さんは今も母に感謝を忘れることはない。そんな俊彦さんに父から届けられたのは、母が生前にいつも身につけていたオパールの指輪。“いつまでも2人を見守っていてくれますように…”そんな父の願いが込められていた。俊彦さんは「懐かしい…確かに受け取りました」というと、指輪を母の遺影と共に並べ、静かに手を合わせるのだった…。