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#130「フランス/ボルドー」 12月12日(日) 午前10:25〜10:55


 今回のお届け先はフランス・ボルドー。この地で日本人としては初めて個人でブドウ畑を所有し、ワインを作っている醸造家の篠原麗雄さん(36)と、兵庫・宝塚に住む父・節雄さん(68)、母・春美さん(67)、兄・幸雄さん(41)をつなぐ。今ボルドーはちょうどブドウの収穫期、両親は「いつも息子が話してくれる収穫の様子をぜひ見てみたい」と期待する。

 大規模なワイン醸造所が立ち並ぶボルドー。そんな中、1ヘクタールにも満たない小さなブドウ畑でたったひとり、無農薬、手作業による採算を度外視したワイン作りを貫く麗雄さん。その妥協のないこだわりのワインは、生産量が年間3000本と極めて少ないが、世界中の愛好家から注目を集めている。

 麗雄さんとワインの出会いは3才の時。ワイン好きの両親が飲み残したワインを飲んで急性アルコール中毒になり、病院に運ばれたのだ。母は「それ以来ワインはダメと言って育ててきたのに…」と苦笑いだが、それがきっかけでワインに興味をもった麗雄さんは、大学卒業後、ワインの販売会社に就職。さらにワインの魅力にのめり込み、10年前に脱サラし、ワイン作りの経験も知識もないまま、本場ボルドーに渡ったのだ。

 そして今年も9回目となるブドウの収穫期がやってきた。東京ドーム19個分の広さを誇る「シャトーマルゴー」など大きな醸造所では、100人を超える専門スタッフを雇い、機械化で効率よく収穫作業を行う。だが麗雄さんの収穫を手伝うのは妻のキャホリンさんとお父さん、その友人のたった3人のみ。しかも房を摘み取ったあと念入りにチェックし、熟成していない粒があれば一つ一つ手で外していく。そうしないとワインの品質が変わってしまうのだ。房から実を外すときも余分なものが入らないよう、手作業で丁寧に行う。そうして摘み取られた実はタンクに入れられ、自然発酵を待つ。麗雄さんは「同じ親から産まれた子供でも、ひとりひとりキャラクターが違う。それと同じで、毎年違う子供が生まれてくるから面白い」とワイン作りの魅力を語る。

 「おいしいワインしか飲みたくない。だからおいしくないワインは作りたくない」と、決して妥協を許さない麗雄さんのワイン作り。そのため生産量は少なく、まだまだワイン作りだけでは食べていけない。だがこのやり方を曲げるつもりはないという。

 ワインの本場にたったひとりで乗り込み、理想のワインを追い求める麗雄さんに、日本から届けられたのは、陶芸をたしなむ父が手作りしたワインクーラー。"いろいろ苦労はあると思うが、これからも妥協せずに自分らしいワイン作りを貫いてほしい"という願いが込められていた。「ありがたい。どこかで僕のことを見守ってくれる人がいるというのは心の支えになる」と父の想いに感謝する麗雄さん。さっそく父のワインクーラーで冷やしたワインを、家族と共に味わう。