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#117「イタリア/フィレンツェ」 8月22日(日) 午前10:25〜11:25


 今回は1時間スペシャル。「ぐっさん」こと山口智充が、番組が始まって以来はじめて海を渡り、イタリア・フィレンツェへ。過去に番組で紹介した、この街で奮闘する日本人の職人たちを訪ね、その繊細な職人技を目の当たりにし、山口自ら家族からの届け物を手渡す。

 まず訪ねるのは、イタリアに渡り12年になる靴職人の深谷秀隆さん(35)。その靴作りへのこだわりは徹底しており、牛一頭の分の革から、たった1足の靴しか作らないというほど。彼の靴はイタリアで最も美しいと言われ、価格は最低でも35万円。そんな並々ならぬ靴へのこだわりをもつ深谷さんと、ようやく対面を果たした山口は「お会いしたかったです!来ちゃいました!」と大感激。

その工房で、山口は深谷さんが靴を作る工程を真剣に見守る。注文を受けてから納品までおよそ1年。足の木型から製作するフルオーダーで、1年に作れるのは40足ほど。元々ファッションデザイナーとして将来を嘱望されていたが、12年前、"自らの手でモノを作り上げたい"とすべてを捨ててイタリアへ。「最初は苦労されたでしょう?」と聞く山口。当初は貯金を切り崩しながらの生活だったという深谷さん。「少しずつイタリア人のお客さんが増え、1足で終わらず、2足3足と買ってくれるようになって、やっとこの街に馴染めた気がした」と振り返る。

 これからも靴職人としてイタリアで生きていく——。そんな決意を抱く息子へ、母からの贈り物が山口の手から直接届けられる。それは深谷さんが大好きだった母手作りのきゅうり漬け。そこにはレシピも添えられていた。実はこの漬け物、いくつもの工程を経て、作るのに丸1日もかかるこだわりの味なのだ。「父も母もすごくこだわる人。凝り性なところが僕に受け継がれているのかも」と深谷さん。だからこそ生み出される誰にも真似のできない靴。深谷さんは「イタリアだけでなく、ヨーロッパの人に認められるまで続けたい」と秘めた決意を語る。



 フィレンツェの街角には似顔絵描きやミュージシャン、パントマイマーなど、さまざまなパフォーマーがいる。山口自身も彼らと絡んでみたり、楽しみながら歩いていると、地面に聖母などの絵をチョークとパステルだけで描くアーティスト「マドンナーロ」の斎藤智輝さん(48)と遭遇する。10年前、絵の勉強をしにイタリアに来たとき、現地のマドンナーロと出会い、その虜になったという。絵の完成までおよそ10時間。やがては雨や風で自然に消えていく路上アートに無心で取り組むその姿に、山口は心を揺さぶられる。

 続いて訪ねるのは、ベッキオ橋近くに工房を構えるジュエリーデザイナーの檀純世さん。17年前にイタリアへ渡り、現在は恋人の金細工職人マルコさんと共に、フィレンツェ伝統の透かし彫りを施したジュエリー「トラフォーロ・フィオレンティーナ」を制作している。糸のこで手彫りされるその職人技の細かさは、山口も思わず「すごい!」と感嘆の声をあげるほど。3年前に工房を立ちあげ、二人三脚で頑張ってきた2人。山口が「もめることは?」と尋ねると、純世さんは「仕事以外も一緒なので、よくもめます(笑)」。前回の取材でも、こだわりの強い職人気質の2人が少々ぶつかっていたシーンもあった。前回のそんな様子を見た純世さんの両親からは「ぶつかることもあるだろうけど、そんな時はゆっくりお茶でも飲んで息抜きして欲しい」と、野点のお茶セットが届けられる。

 そして最後の配達先は、イタリアに渡って13年になる壁画修復師の前川佳文さん(36)。さっそく前川さんが修復を終えたばかりの教会へ。そこは前回放送の時に前川さんが修復をしていた場所。あの時ススにまみれて真っ黒だったフレスコ画は、1年経って500年前と同じ輝きを取り戻しており、山口も「色が鮮やか。全然違う」と感激する。現在は修復学校でも教えている前川さん。その教え子が修復作業をしている現場にも、特別に立ち入らせてもらい、洗浄作業を見守る。みるみるオリジナルの色が現れてくる様子に感激する山口。前川さんも「この瞬間がものすごく感動するんです」という。前回の取材では、「早く日本に帰ってほしい。孫の顔が見たい」と涙をこぼした前川さんの父。「お父さんへの思いは?」と聞く山口に、前川さんは「気持ちはよく分かる。でも心底この仕事が好きでここにいる。日本に絶対帰らないわけではないから、もう少し待っていて欲しい」と現在の気持ちを明かす。そんな前川さんに父から届けられたのは、前川さんが欲しがっていた炊飯器と、亡き祖母が最後に漬けた梅干し。そこには「息子の帰国を願うだけでなく、これからは理解して応援したい」という父の決意が込められていた…。