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#111「アメリカ/ミシガン」 7月11日(日) 午前10:25〜10:55


 アメリカ・ミシガン州のミシガン大学古生物学博士課程で、研究員として恐竜の研究を続ける池尻武仁さん(39)と、名古屋市に住む母をつなぐ。現在、博士号の取得を目指し、10年を費やした研究の集大成となる論文制作に追われる武仁さん。母は「卒業できるのか…。卒業できなければ仕事にも就けないし、結婚もできない」と、結婚に目もくれず研究に没頭する息子を心配している。

 武仁さんの研究テーマは「恐竜の巨大化の謎」。恐竜と近縁のワニの骨の成長を調べることで、恐竜と比較し、巨大化の謎を解き明かすのだ。10年に渡る研究の最終段階となる論文執筆に没頭する武仁さんは、「研究は作品のようなもの。映画を一本撮るような感覚に近い」といい、ずっと目標にしてきた博士号取得に対しては「自分でチームを率いて仕事ができるようになるし、給料も全然違う。博士号はゴールというよりスタートポイント」と思いを語る。

 日本の大学を卒業後、かねてから興味のあった恐竜研究をするため、12年前に渡米。各地の大学で発掘、研究を重ねてきた。2006年には画期的な大型草食恐竜の雌雄判別法を提唱したことで、一躍注目された。現在は大学から研究費と給料をもらって研究する一方で、大学内で講師の仕事や、世界各地から届く化石の修復などの労働が義務づけられている。月収は16万円程度。生活は決して楽ではない。

 一人暮らしが長く、料理も得意な武仁さんだが、母が心配する結婚については「仕事を探して、それからですね。したくないわけじゃないけど…面倒臭いのもありますね」と、今は結婚より研究が第一のようだ。子供は欲しくないか?の質問にも「人間の成長パターンを間近で見られるという意味では興味はありますけど…(笑)」と、あくまで研究者目線。そんな武仁さんに、山口智充は「熱い少年の心を持ってらっしゃいますよね」と感心するが、母は「人並みに結婚してほしかったけど…これじゃ化石と結婚ですね」と諦め顔だ。

 日本を離れて12年。研究に明け暮れ、10年前に父が亡くなったときも帰国することができなかったが、「後ろめたい気持ちはないですね。父も自分のやりたいことを押し通してきた人だったから、途中で投げ出すほうが父に後ろめたさを感じたかもしれない」と武仁さん。だが論文提出を前に、「これでもう終わらせる。さらに10年もやりたくない(笑)」という言葉に、楽しいだけではない、研究者の苦労も覗かせる。

 そんな武仁さんに母から届けられたのは、武仁さんが小学生の頃に両親に買ってもらった恐竜の本。博士号に向けて大事な時だからこそ、原点に返って、あの頃の楽しい気持ちを思い出して欲しいという母の想いが込められていた。添えられた手紙には、母だけが知る亡き父の想い、"自分の思い通りに生きてみろ"という言葉が綴られていた。武仁さんは「これを励みにますます頑張れそうです」と、大きな力を得る。