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#104「トルコ/カッパドキア」 5月16日(日) 午前10:25〜10:55


 今回のお届け先はトルコ共和国。標高1000mを超える高原に広がる奇岩の大地・カッパドキアで、気球ツアーガイドをしている齋藤幸枝さん(33)と、千葉県船橋市に住む母・一子さん(61)、妹・寿枝さん(30)をつなぐ。トルコ人の夫が昨年起こした気球ツアー会社で、スタッフとして働く幸枝さん。母と妹はまだ一度もその仕事ぶりを見たことがないそうで、気になる様子。母は幸枝さんたちが幼い頃に離婚し、女手ひとつで娘たちを育ててきたが、母は「娘の夫は、そんなうちの家庭の事情を理解してくれる優しい人」と、大きな信頼を置いているようだ。

 現在、カッパドキアの気球ツアーは大人気で、幸枝さんと夫・テイフィクさん(40)らは休む暇もないという。そんな幸枝さんたちの仕事は早朝5時から始まる。その日の風の向きと強さを調べ、気球の出発地点を選ぶのだ。6時半になるとツアー客たちが到着。出発地点へ客を運び、準備の整った気球へ乗り込むと、いよいよフライト。幸枝さんも日本人客のガイドとして一緒に乗り込む。気球は風に乗って壮大な大自然の景観を眼下に飛行し、高度1000mにまで達する。カッパドキアの空を埋め尽くす色とりどりの気球に驚かされるが、「毎日40機は飛んでいます。夏場には60〜70機にもなります」と幸枝さん。今や気球の会社は12社を超え、生き残りを賭けた厳しい競争が続いているのだ。

 幸枝さんがテイフィクさんと出会ったのは7年前。旅行でこの地を訪れたとき、ガイドをしてくれたのが彼だった。その後、日本まで追いかけてきたテイフィクさんと暮らし始め、5年前に入籍。翌年トルコへ移住した。今、幸枝さんは週に一度、近くに住むテイフィクさんの母と必ず一緒に買い物に行くという。トルコの人たちはいつでも一緒に行動し、家族の結びつきが特に強い。最初はそんな濃密な家族関係になじめず、幸枝さんは「一人になる時間がまったくないのがつらかった」と振り返る。夕食も家族や親戚が集まって必ず一緒に食べ、食事の準備も皆で行う。キッチンに立つ幸枝さんは「母は仕事をしていたので、一緒に料理をすることはほとんどなかった。今は何をするのも皆と一緒なので楽しい」というが、義母は「彼女は最初、家族といることが好きではなく、皆で食事をしようとしたら泣き出したこともあった。そのときは息子が連れて帰ったが、悲しかったよ」と秘話を明かす。「でも、それから徐々に仲良くなっていったよ」と笑う義母と幸枝さんは、今ではまるで本物の母娘のようだ。

 すっかり大家族の一員になった幸枝さん。「昔は、“家族は血がつながっていても、ただ一緒に住んでいるだけ。私は私”という考えだった。でもトルコの人たちは表現が豊かで、自分が大事にされていることが分かる。ここに来て初めて“家族って大事なんだ”と思うようになった」と打ち明ける。その一方で、日本の母は子供を育てるために働きづめだったため、家族の団らんや家族のつながりを感じる時間を持てなかったのが心残りだという。

 そんな幸枝さんへ、母から届けられたのは指輪。40年前、母が生まれて初めて自分で買った宝物だ。母の手紙には「もし結婚式を挙げることがあれば使ってください」と書かれていた。そんな母のささやかな願いに、幸枝さんは「母に大事にされていたんだなと、あらためて思います。育ててくれてありがとうと言いたい。結婚式…挙げないといけませんね」と言って、大粒の涙をこぼす。