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#086「アメリカ/ニューヨーク」 12月27日(日) 午前10:25〜10:55


 今回の配達先は数多くのジャズクラブが軒を連ねるアメリカ・ニューヨーク。そんなジャズの聖地でプロのジャズベーシストとして活躍する植田典子さん(37)と、兵庫・宝塚に住む父・豊賓さん(64)、母・直子さん(63)をつなぐ。典子さんがアメリカに渡って14年。今や名門ジャズクラブを飛び回る売れっ子となったが、父は「ちゃんとプロとしてやって行けているのか」、母は「結婚はどうするつもりか…」と心配は尽きない。

 ニューヨークで演奏を続けて11年。現在はライブハウスやレストランなどを中心にステージに立つ典子さん。フリーランスのため、すべてを一人でやらなければならず、大きなウッドベースを抱えてブルックリンの家を出、自ら車を運転して2時間ほどかけ仕事へ向かう。その日、店から渡された曲目を、ピアニストやドラマーとリハーサルする間もなく、いきなり演奏しなければならないことも。ぶっつけ本番もジャズのステージでは日常茶飯事なのだ。それでもお客さんが満足する演奏を提供するのが一流の証し。典子さんはそんな中で腕を磨き、プロのベーシストとして生き抜いてきた。

 高校生の時にロックバンドを組み、初めてベースを手にした典子さん。その後、ウッドベースに転向し、音楽大学卒業後はベースを極めるためにアメリカへ渡ってバークリー音楽院でジャズを学んだ。プロデビュー後はさまざまなジャズクラブで地道な活動を続けたが、22才の時、彼女の運命を変える出会いがあった。小さなライブハウスで偶然、典子さんの演奏を耳にしたある人物が、「一緒にバンドを組まないか」と声をかけたのだ。ジャズ界の大物ドラマーでシンガーのグラディー・テイトだった。「彼女の演奏を聴いた途端、惚れ込んだ。素晴らしい感性の持ち主だよ」と、グラディー・テイトは典子さんの才能を絶賛する。

 今や彼女の元にはオファーが殺到。ジャズ一筋に生きる典子さんだが、「身体一つの仕事。病気やケガをしたら仕事はできない。そういう意味ではその日暮らし。でも、そんなことを考え出したら前に進めなくなる」と将来への不安も打ち明ける。現在、典子さんにはウッドベース修復師の50才になる恋人がいるが、結婚については「先のことはまだわからない」と、まだまだ将来は見えないようだ。

 両親に対しては「私のやりたいことをやらせてくれ、いつもサポートしてくれる。信頼してくれているのをすごく感じている。ありがたい」と典子さん。毎晩のように舞台に立ち、ほとんど休みがない典子さんは年末年始も忙しく、ここ7年ほどは正月を日本で過ごすこともできないという。「こたつでミカンを食べながら、紅白歌合戦を見て過ごしたい…」と、典子さんは家族との正月を懐かしむ。

 そんな典子さんに、母から届けられたのは手作りのおせち料理。そこには「どんなときも家族の絆を忘れないでほしい」という母の思いが込められていた。7年ぶりに味わう見た目も美しい母のおせちに、典子さんは「このまま置いておきたいぐらい」と言って、感激の涙をこぼす。