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2025.11.28

先週11月21日(金)に公開となった『果てしなきスカーレット』。前作の『竜とそばかすの姫』から約4年半ぶり、細田守監督の待望の新作です。そこで描かれたテーマは「生きる」。
父の復讐に失敗するも、≪死者の国≫で再び宿敵に復讐を果たそうとする王女・スカーレットを芦田愛菜さん、また、≪死者の国≫でスカーレットと出会う、心優しい日本人看護師の聖を岡田将生さんが演じ、豪華キャストでも注目の作品です。今回は、同作誕生の秘話や見どころについて、細田守監督に話を伺いました。
Q.今作は、青春や親子愛などが描かれる、これまでの細田作品とは異なる復讐劇です。一体どういう思いから、このテーマを選ばれたのでしょうか?
細田「急にどうしたんだ、何がしたいんだ」と、よく言われるんですけど(笑)、自分としては一貫して現世と魂の世界や、家族・輪廻のようなことをテーマにしてきたので、「生と死」という点では自然な流れだと思ってるんですよ。
今って、コロナ禍が終わったと思ったら世界のあちこちで戦争が起こり、なんだか世界中が不安な空気に包まれていますよね。戦争は報復の連鎖というか…そう考えた時に、復讐劇というのはとても今日的なテーマだなと思ったんです。そこから、復讐劇と言えば『ハムレット』、ハムレットと言えば、“生きるべきか死ぬべきか”、という流れの中で生まれました。
ただ、復讐劇って昔からありますよね、悪人を倒してスカっとするような。でも今はそうじゃなくて、復讐を繰り返したり、どちらにも正義があって善悪をつけられない。そうした復讐劇というものをどう描くかを考えました。

Q.また、3Dを取り入れたアニメーションが、より強い没入感を生んでいました。
細田テーマが壮大になったぶん、それに合わせて画もスケールアップさせたくて、日本の手描きアニメーションの良さを生かしつつ、3Dを融合させるという新しい表現を見つけるところから始まりました。やっぱりテーマと表現は響き合わないと面白くない。スケールに見合う表現を試行錯誤したので、今回は4年ほどの歳月を要しましたね。
Q.主演の芦田愛菜さん、岡田将生さんをキャスティングされた理由をお聞かせください。
細田復讐劇というものの、王女がどう生きていくか、という点も欠かせないテーマになっています。芦田さんは、若くして、すごくたくさんの経験を積まれていますよね。日本の素晴らしい若手俳優さん達の中でも、一国の王女としての自覚と覚悟を持ったスカーレットを演じられるのは、明らかに芦田さんが適役だと思ったんです。一方、スカーレットと対照的で、優しくて人を助ける職業の看護師である聖役の岡田さんは、元々すごく優しくい方だし、人間性が聖と近いなと思いました。舞台『ハムレット』でのご経験もあるし、ドラマで看護師役もされていたと聞いて、この作品にぴったりだなと思いましたね。
ふたりが歌うシーンもありますが、スカーレットや聖の心の声のような、深い感情が伝わってきて、とても素晴らしかったです。
Q.映画では、宿敵に復讐を果たそうとするスカーレットと聖との心の交流を中心に、戦闘シーンや忽然と姿を現すドラゴン、そして国籍や文化をこえた人々との交流も描かれているのも、とても印象的でした。
細田この映画はヴェネチアやニューヨーク、台北などの各国の映画祭でも上映されました 。≪死者の国≫のドラゴンについては、捉え方が国によって様々だったんです。日本や台湾では「天災」と捉えられたり、他の国では「あれは運命だ、神だ」と言う。それはとても興味深い点でした。
前作の『竜とそばかすの姫』の公開時は、まさにコロナ禍でした。無観客の東京オリンピックが開催されて、次は大阪・関西万博へ…という時期に『果てしなきスカーレット』を作り始めたのです。その後、インバウンドの急増で外国人観光客がすごく増えましたよね。変わりゆく日本や生活の中から、知らずに受けた影響が、自然と作品に反映されたのだと思います。まさに、僕たちの環境が変化したということの現れですね。
Q.最後に大阪の印象もお聞かせください。
細田大学時代の関西の友達も多く、彼らの力強くてポジティブな気質にも影響も受けました。今でも仲良くしていられることを嬉しく思っています。
今回は、新幹線で大阪に着いた瞬間からすごく人が多くて、「まだ万博、やってるの?」と思うほどでした。万博は大盛況で閉幕しましたが、これをきっかけに大阪・関西に注目が集まるのはお住まいの方にとっても嬉しいことですね。

最新作『果てしなきスカーレット』への思いを語ってくれた細田監督。≪死者の国≫で復讐心に燃える王女・スカ-レットが、果てしない旅路の先にたどり着く、ある決断とは――。
現在、全国にて公開中です。
| 『果てしなきスカーレット』 |
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| 全国にて公開中! 監督・脚本・原作:細田守 出演:芦田愛菜 岡田将生 山路和弘 柄本時生 青木崇高 染谷将太 白山乃愛 / 白石加代子 吉田鋼太郎 / 斉藤由貴 / 松重豊 市村正親 役所広司 ⓒ2025 スタジオ地図 https://scarlet-movie.jp/ |
