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特 集

2019/02/09

特集01

技術の日産復活なるか? 日産レーシングカーの戦いに密着

(実況)
「シグナルオールレッドからいま
 ブラックアウト!
 マラケシュEプリックスがスタートしました!
 日産のブエミが3番手から素晴らしいスタートで飛び出した。
 ああー!第一コーナーで早くも波乱!
 BMWのバードと2番手のベルニュが接触!
 前をふさがれたブエミは大きく順位を落とした!」

停止状態からわずか3秒でスピードは時速100キロに。
最高速は280キロに達する自動車レースフォーミュラE。

“電気自動車のF1”とも言われるこのレースに
唯一の日本メーカーとして今シーズンから参戦したのが日産だ。

(日産監督カルカモ氏)
「日産には一般道の走行に関するデータの蓄積がありますが、
 今度はその経験をレースに持ち込むわけです。
 タイミングとしては申し分ないでしょう」

EV=電気自動車シェアトップのメーカーとして
電動技術のすべてをレーシングカーに注ぎ込む日産の戦いに密着した!

レース前日、日産のガレージ。
メカニックたちが本番に備えていた。

斜めに突き出たリアウイングが特徴的な車両。

動力は電気モーター。
排気ガスやCO2は一切出ずあの大きなエンジン音もしない。

このためサーキットではなく
市街地の一般道を一時的に閉鎖して行う環境にやさしいレースだ。

ガレージ裏には無数の充電ケーブルが。
専用の発電機はバイオ燃料を使ってCO2の排出を抑える
特殊な技術が使われている。
フル充電までの時間はおよそ40分だ。

フォーミュラEでは公平性を考慮し、
全チーム同じ車体とバッテリーを使用する。

バッテリー容量は54キロワットアワー。
これは、一般的な家庭のおよそ3日分の電力が賄える量に相当する。

今回の日産のフォーミュラE参戦は、
昨シーズンで撤退したルノーのチームを引き継いだものだ。

レース挑戦がスタートしたのは去年末。
ゴーン前会長の特別背任事件で揺れる中での船出だった。

チームの監督マイケル・カルカモ氏は体制を一新し
ルノーとは全く異なる姿勢で臨んでいると話す。

(日産監督カルカモ氏)
「ルノーと日産では特にレース車両開発のアプローチに違いがあります。
 日産にはEVの販売をリードしてきた実績があり、
 膨大なデータの蓄積があります。
 そうしたデータをレースに活用するつもりです」

日産のドライバーは…。

22号車は今シーズンから加入したオリバー・ローランド。

そして、こちらはチームのエースナンバー「ニッサン」
23号車のステアリングを握るセバスチャン・ブエミだ。

ブエミは2016年の第2シーズン、ルノーでシリーズチャンピオンを獲得。
また、去年のル・マン24時間レースで
中嶋一貴らとともにトヨタを念願の初優勝に導いたドライバーだ。

(S・ブエミ)
Q大きな変化はありましたか?
「たしかに大きく変わったよ。
 スタッフはそのままだが大勢の日産スタッフがチームに加わった。
 日産フォーミュラEチームに入れたことを
 みんなとても喜んでいるよ。」

ルノーから日産へと主導権が移ったフォーミュラEのレース活動。

その拠点がフランス、ル・マンにある。
ここで、開発の陣頭指揮をとっているのが
モータースポーツ担当の西村氏だ。

(日産・西村氏)
「ドライバーのすぐ後ろに大きなバッテリーが搭載されている。
 バッテリーのハードウェアとソフトウェアは全車共通で
 同じ性能になっている」

フォーミュラEでは車体とバッテリー以外は
チーム独自の開発が認められている。

西村氏によると限られたバッテリーの電気を
効率よく使うためのソフトウェアの開発が、
レースでの勝敗のカギを握るという。

バッテリーの電気を絶えず全開で放電すれば
45分間のレースを走り切ることはできない。

電気自動車はブレーキングなどの減速時に
モーターを発電機として使い、
電気を再びバッテリーに充電する機能がある。

レースではコースに合わせて
アクセルとブレーキ
放電と充電のバランスを細かく制御することが求められる。

(日産・西村氏)
「クルマの限界域でどうクルマを動かすか
 エネルギーをどう回収するかというのは
 量産車の中でも見ていかなければならない領域。
 レーシングカーを使って短期間の中で
 フォーカス(集中)して作っていけるかというのが
 このクルマを使ってやる一つのメリット」

ライバルは去年のシリーズチャンピオン
アウディだという西村氏。

今シーズン好調なBMWに加え、
昨シーズンからジャガーやシトロエンなどが続々参戦。

また今年末からはポルシェやメルセデス・ベンツも参戦を表明している。

フォーミュラEはまさに“戦国時代”に突入した。

相次ぐメーカーの参戦。そこには急速に進む
自動車の“EVシフト”がある。

今後メルセデス・ベンツなどが
続々と新型の電気自動車を市場に投入する予定なのだ。

フランス・パリでは未来のEV社会のヒントとなるような
インフラの整備が進んでいる。

(ディレクター)
「パリ市内にはこうしたEV用の急速充電器がおよそ1600機
 設置されている」

こうしたパーキングメーター式の充電設備。
1万5千円ほどの年会費で充電カードを発行してもらえば
全ての施設で充電が可能だ。

自家用車であれば電気料金は無料。充電中の駐車料金もかからない。

(EVユーザー)
「どこでもこのカード1枚あればタダで充電できる。
 とても快適だね」

今後、EVシフトは急激に進むと予測するのは
電気自動車に詳しいモータージャーナリスト舘内端氏だ。

(モータージャーナリスト 舘内端氏)
「特にヨーロッパは2020年から2030年の間に
 新車の半分くらいはEV(電気自動車)になってくる」

その背景にあるのは、2021年から
地球温暖化防止のため、EUが自動車メーカーに課す大幅なCO2削減規定だ。

各メーカーには達成しなければならない
非常に高いハードルが待ち構えていると舘内氏は指摘する。

(舘内氏)
「2021年(削減が必要な削減量は)1km走ったときに
 CO2排出量95g日本流に(燃費に換算)直すと29km/l。
 そのメーカーが作ったクルマの平均値がそういうこと」

これはイギリスの調査会社による
メーカー別1台あたりに換算した削減可能なCO2排出量のランキングだ。

2021年にEUの定めた基準を
クリアできそうなのはボルボ、トヨタ、そしてルノー日産三菱連合のみ。

しかし…

(舘内氏)
「これが2030年にさらに37.5%削減しろというのがEUの要請。
 これを日本流に直すと47km/l。
 それはエンジン車で可能なのかというとドイツのメーカーは全部ギブアップ。
 EVを入れないとこの規則は守れない…
 これが(EVシフトの)原動力なんですね」

わずか10年でヨーロッパで走る自動車の5割近くを
電気自動車に変えてしまうCO2削減規定。

EUは、排出ガス削減による温暖化の抑制を最優先する考えだ。

(EU・イチコネン氏)
「EUが提言を行ったのは2017年ですが
 この年自動車などの運輸交通分野が
 ヨーロッパ内でのCO2排出量の実に4分の一を占めており、
 その排出量が増え続けています。
 これをいかに効果的に削減するかという問題に真摯に取り組む
 必要があるのです」

こうした中、現在日産は三菱自動車とともに
新たな小型の電気自動車を開発中だという。

(舘内氏)
「日産と三菱は今年中に新型の軽自動車のEVを出す。
 一番下のクラスの世界戦略車が出ると考えた方がよい」

この車両をベースにすることでルノーも低価格の新型車を発売できる。

舘内氏によると、この連携によってEV市場で3社は
より優位な立場に立てる可能性が高いというのだ。

日本メーカーとして唯一、
日産が参戦しているフォーミュラEの第2戦。

レースは26周に入ったところでトップの2台がからむ大波乱が…。

(実況)
「ああ!BMWダコスタがシムズに接触、
 ダコスタはのままはタイヤバリアに! 
 ダコスタはゴール直前でリタイヤ!なんということだ!」

セーフティーカーが入り、全車追い越し禁止。順位の差が一気に詰まる。

レースはラスト1周。再スタートのダッシュが勝負の分かれ目になった。

(実況)
「いま続々とマシンがアタックゾーンを踏んで行きます」

実はフォーミュラEには日本のテレビゲームを
ヒントにしたようなしくみがある。それが、アタックモードだ。

コース上にはアタックゾーンと呼ばれるレーンがカーブの外側にある。

内側を走るよりタイムは遅くなるが
ここを踏むことでクルマはプラス25%の電力、
ボーナスパワーを手に入れることができる。

(実況)
「ファイナルラップでレース再開
 トップはマヒンドラのダンブロジオ!
 ぎりぎりのブレーキングで最終コーナーを立ち上がり今チェッカー!
 インドのチーム、マヒンドラが波乱のレースを制しました!」

優勝はインドの輸送機器大手
マヒンドラが運営するマヒンドラ・レーシング。

日産はブエミが必至に追い上げポイント圏内の8位に入った。

(日産・西村氏)
「スポーツなので見てる人が見てわくわくする。
 エンジニアからするとそこに技術開発する場があるのであれば
 先進技術を使ってどのような量産車を世に出していくかを
 考える場でもあるので、それをどう融合させるかというのが
 一つの課題」

クルマの電動化がますます進む中、
電気自動車最高峰のレースで結果を残せるか?
「技術の日産」の復活が待ち望まれている。

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