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特 集

2019/08/17

特集01

令和のジャパニーズドリーム

日本から5000キロ。アジアの内陸国・ネパール。
仏教とヒンズー教による独特の文化を持つ。

ヒマラヤが見下ろす首都・カトマンズにいま、こんな光景が…。

(菱田雄介ディレクター)
「こちらはカトマンズのバグバザールという
 場所なんですけど、日本語教室が本当にたくさんあるんですよね。 
 まずこちらご覧ください。JAPANと書いた看板があります。
 通りの向こう側にも日本語教室の看板が出ています。
 カメラを振っていただくとこちらも日本語教室ですね。」

学生街・バグバザールにはたくさんの語学学校が軒を連ねるが、
その中でも明らかに多いのが「日本語学校」。

暗い廊下の先を訪ねてみると…。

(菱田雄介ディレクター)
「うわ、すごい熱気ですね。狭い教室に人々がひしめき合っていますね。」

早朝6時に始まる日本語の授業。
クーラーのない狭い室内にはむせ返るような熱気が充満していた。

(AJISAI日本語学校)
「マイニチ チョキンします!100ルピーをチョキンします!」

いったい彼らはなぜ日本語を学ぶのか?

(AJISAIの生徒 スリジャナ・タマンさん) 
「日本で働きます。」

(AJISAIの生徒 シジャニ・ケンバーリさん)
「日本で働くことが出来るようになったと聞いて、それで行きたいと思いました。」

「日本で働きたい」。
ネパールの若者を沸き立たせたのは去年の年末に報じられたあるニュースだった。

(菱田雄介ディレクター)
「日本がネパールの労働者を新しいビザで迎え入れるという記事ですね。」

記事が伝えているのは、去年12月、国会を通過した「改正出入国管理法」。

事実上の「移民政策」だとして野党が強く反発する中で成立、ことし4月に施行された。

現在、日本で働く外国人労働者は大きく2つに分けられる。

コンビニエンスストアなどで働くのは、週28時間の労働が許された「留学生」。

工事現場などで働くのは、日本の技能を学ぶことを目的とした
「技能実習生」であることが多い。
どちらも、来日の目的は学ぶことであり、労働ではない。

今回、新たに創設された在留資格「特定技能」では、
介護や外食産業、農業など14の分野で「労働」を目的とした来日が可能となる。

1日に1000人の若者が出稼ぎに出国すると言われるネパール。
平均月収、およそ1万8000円。
その10倍を稼げる日本の「特定技能制度」は大きな注目を集めた。

早朝のカトマンズに響くラジオ体操。

おそろいのジャージに書かれているのは「ネパール人材開発株式会社」の文字。
ここは日本で働きたい若者が集まる人材育成機関なのだ。

(ネパール人材開発株式会社 授業)
「きょう一日、朗らかに!安らかに!喜んで、進んで働きます!」

朝7時から始まる授業は日本語だけではなく、「農業」や「出入国管理法」など、
専門的なものも多い。
「特定技能」の資格を取るためには、日本語能力試験4級(N4)の
ほかに、介護や外食産業など、各分野の基礎知識もテストされるのだ。

外国人には難しいこんな日本語のニュアンスも…。

(ネパール人材開発株式会社 授業)
「これは買いますか?
 うん! うん! はい、買いますという意味ね。
 これは買いますか?
 ううん! これはいいえ、買いません。」
「うん! うん! うん! ううん!ううん!ううん!」 

校長のサキャ・アノジュさんは日本滞在歴20年以上。
来日したネパール人が日本社会に溶け込めない現実を見て、
集団生活をしながら日本の文化や習慣を学ぶ教育機関を設立した。

(サキャ・アノジュさん)
「ネパールにいるときのネパール人と日本に行ってからの
 ネパール人は全然違うので、なんで日本に来ると日本の社会秩序や
 ルールを守らないでいい加減なことをするんだと思って。
 「あーもう特定技能だ、就労なんでもできる!」となったら
 社会問題になってきますね。それは教育で変えて行くしかないと思いますね。」

学生たちが暮らす部屋には、私物はほとんどない。
仲間と共に、ひたすら勉強の日々。

(スレシュタ・ザビトラさん)
「はじめまして、私はスレシュタ・ザビトラと言います。いまハタチになりました。」

「すごい、綺麗な平仮名が並んでいますね…。」

日本での就職を目指し、8か月前に勉強を始めたというスレシュタさん。
将来は日本で農業の仕事に就きたいという。

窓の外に広がる8000m級の山々。
日本を目指す若者はどこからやって来るのか?
我々はスレシュタさんの実家へと向かった。

地方の空港からさらに車で1時間…。
インドとの国境に近いジャパ郡のサヌバラガリ村が彼女の故郷だ。

(菱田雄介ディレクター)
「ナマステ――!」

半年ぶりに会う家族。スレシュタさんは3人姉妹の長女だ。
牛の乳を搾って料理を作り、ポンプでくみ上げた井戸水で食器を洗う。
日本とは全く違う、ネパールの農村の暮らし。

(スレシュタさんの父親) 
「娘を誇りに思っています。日本で何かを学び、良い将来を作ってほしいと思います。」

(スレシュタさんの母親) 
「私もとても嬉しいです。母親としては寂しい気持ちもありますが…。」

父親も中東やシンガポールで出稼ぎをして家計を支えてきた。
海外で働くことはこの地方では当たり前のことなのだ。

(スレシュタさんの祖母)   
「友達や仲間の中でも一番になってほしいと思います。
(スレシュタさんの母親)
 「負けないようにね。」
(スレシュタさんの祖母) 
「そう、一番になってほしい。」

日本に送り出すには、それなりのお金もかかる。
それでも娘が日本で働くことは家族の将来にとって希望となるのだ。

再びカトマンズの学生街、バグバザールに行ってみると…。

(菱田雄介ディレクター)
「なんかこの辺、異様な雰囲気なんですけど。
 みんな今、答合わせをしているようですね。」

道の真ん中や商店の入り口でもお構いなしに答案用紙を見つめる人々。
話を聞いてみると…。

(韓国語の試験を受けた人)
「私はナリス・サウドです。私はネパール人です。」

彼らが勉強しているのは韓国語。韓国政府はEPS・労働許可制度に基づき
ネパール人を定期的に労働者として受け入れているのだ。

働ける期間は最長でおよそ10年。最低賃金法や保険制度も整っており、
若者の人気は高い。
ことし行われた試験では1万人の募集に9万2000人が殺到した。

(韓国語学習者)
「韓国は以前から労働者を受け入れてきました。
 日本も募集があったようですが、途中で止まっていて、みんな不安に思っています。
 日本語を勉強する人は減っていると思います。」

日本語の学習者が減っている…とはどういうことなのか?
日本語学校の経営者に聞いてみると…。

(日本語学校経営者 ラビ・シュレスタさん)
「日本に韓国みたいに労働ビザで特定技能(資格)で
 行けるとなった後に学生の人数が増えましたが、
 それは時間がかかるというニュースが出てどこでも減っていますね。」

日本政府とネパール政府が「特定技能」の覚書に署名したのは、ことし3月。

4月に法律が施行されると日本国内やフィリピンでは試験が開始されたが
ネパールでの試験日程は発表されず、不安の声が広がっていた。

「特定技能」の試験は行われるのか?
ネパール政府の海外雇用局長に話を聞いた。

(ビシュマ・ブサル海外雇用局長)
「さる3月の覚書締結後、4月に試験が行われることを期待していました。
 しかし、日本側の準備で少し時間がかかりました。」

たしかに準備は遅れたものの、ことし10月には「介護」分野の試験を行い、
その後、他の分野に拡大される方針だという。

(ビシュマ・ブサル海外雇用局長)
「恐らく日本はネパール人が選ぶ国の中でも第一の選択肢に入ると思います。
 ネパールの若者が日本で働き、文化や習慣についても
 学んでくることを期待しています。」

日本語教育の波は、子供たちにも。
すべての授業が英語で行われているこの学校。
ことしから日本語の授業も開始した。
長野県の高校と提携した留学制度も始まっている。

(プラティマ・ギミレさん)
「日本は私の夢の国です。日本の文化や価値観、
 時間を守る習慣などを学んでみたいと思います。」

「特定技能」制度で政府が想定する外国人労働者の数は今後5年間で34万5150人。
その一人一人が言葉も文化も違う国からやってくる若者だ。

(サキャ・アノジュさん)
「平成時代が終わり、令和時代に入りまして、日本は外国人との
 共生社会実現に向けて安全で幸せに暮らせる社会を願って
 心がある、ハートがある人間を送り出したいと思っています。」

ヒマラヤの国の若者たちが胸に抱いたジャパニーズドリーム。
私たちの社会はそれをどう受け止めるのだろうか?

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