宇宙兄弟

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#99

2014年3月22日
「人生可変、約束不変」

『兄とは常に、弟の先へ行っていなければならない』

子どもの頃から、兄・六太はずっとそう思っていた。
だが、何かにつけて先へ行っていた、弟・日々人。
しかし今は、自分が日々人の先に行っているのか、後ろにいるのか、なにもわからない。それは、日々人が何も言わず、六太の前から姿を消したからだった。

日々人が心配で、訓練にも集中できない日が続く六太。
そんな様子を見かねた新田が、珍しく六太を飯に誘った。

ピザを食べながら、新田は自分の弟・カズヤの話を始める。
以前引きこもりだったカズヤは、今は外にも出られるようになり、バイトにも行くようになったらしい。さらに、ずっとやりたがっていた、宇宙関連の会社の入社試験を受け、筆記試験を通って面接まで行ったとのこと。
だが結果は、不合格だった――。

『過去に何もせず引きこもりの経験がある人間は、大事な時にまた引きこもる可能性がある』
その会社の上司数名から、そう判断されてしまったのだ。
日々人の現状と重ね、カズヤを心配する六太。しかし、カズヤは英会話の勉強をはじめ、ヒューストンで仕事を探すことに決めたらしい。六太は願った、日々人もカズヤのように前に進んで欲しい――と。

その帰り際、ようやく六太のもとに、日々人からメールが届いた。
『久しぶりムッちゃん。しばらくずっと死んでたけど。なんとか最近生き返りつつあるよ』
どうやら日々人は。今までアメリカのいたる所をブラブラと一人旅していたらしい。そして六太に、自分がNASAを去ることを明かす。
『だけど心配はいらねーよムッちゃん。宇宙飛行士を辞めるつもりはねーから』

後日――。
NASAの室長バトラーは、JAXAの星加と話し合っていた。
日々人が再び月に行けるように、星加が協力してくれていたのだ。
「なんてことはない。アストロノートからコスモノートって呼び名に変わるだけだよ――って言ってましたよ。日々人君は」
日々人はNASAを離れ、ロシアで宇宙飛行士となり、再び月を目指すことにしたようだった。

半年後――。
六太はキャプコムとして、月へ向かうビンスを送り出していた。
誰もがビンスたちの乗ったアレスワンを見上げている頃、六太の心は、日々人からあの日届いたメールの、最後の一文を思い出していた。

『月面で会おう』

六太には、いま日々人が何をしているのか、知ることはできない。
だが、六太は信じていた。
日々人も、必ずどこかで月へと近づいているはずだと――。

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