宇宙兄弟

今までのお話バックナンバー一覧

#92

2014年2月1日
「孤独な彼ら」

次に月へ行く日本人に選ばれた六太は、『控え』の経験を積むため、CES—62のバックアップクルーとしてデザートラッツ訓練を始めようとしていた。

六太と同じバックアップクルーに選ばれたのは、NEEMO訓練で一緒だった、一際背の高い大男——アンディ・タイラー。大耳にピアスを付けたドレッドヘアの男——フィリップ・ルイス。黒のハットを被り、黒のジャケットを着込んだ優男——カルロ・グレコ。パーマのかかった黒髪を一つに纏めた女性——ベティ・レインの四人。六太と共にこれから厳しい訓練をこなしていく彼らは、そのまま一緒に宇宙へ行くメンバーでもあるらしい。

まだ互いの事をよく知らぬまま、訓練教官である地質学者のジョージ・マグワイアから説明を受け、砂漠に作られた『アリゾナ州北部ブラックポイント・ラバーフロー試験場』に来た六太たち。

初日の訓練は、ビートルの運転と、宇宙服を着ることだったが、訓練が開始されてもバックアップクルーのメンバーにはまとまりがない。それもそのはず、実は六太以外の四人は、宇宙飛行士たちの中では『はみ出し者』だったのだ。アンディは、無口と巨体が醸し出す異様な雰囲気のせいで怖がられ、ベティは、強い態度と物言いがまるで、バリアでも張っているかのようで近寄りがたい。カルロは、気取った言動に嫌気が差した周囲から疎ましがられ、フィリップは、ムダに陽気で騒がしいノリに、誰もついていけない。残念ながら、本心から彼らと共に宇宙へ行きたがる者はいないらしい。

そんな『孤独ではあるが優秀な彼ら』を宇宙へ向かわせるため、バトラーが考え抜いた結果が、六太を投入することだった。これまでミラクルを起こし続けてきた六太の『可能性』にかけたのだ。

そしてバックアップクルーには、あと一名追加される予定だった。頼れるリーダーさえいれば、チームはまとまるはずである。
そんな一癖も二癖もある連中をまとめられる人物とは一体——誰?

バックナンバー一覧はコチラ