宇宙兄弟

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#90

2014年1月18日
「小っちゃいメモとでっかいお守り」

六太が次に月へ行く日本人に決まり、ビンスの控えとして新しい訓練を始めた頃、日々人はPD(パニック障害)を克服できたか確かめるための、復帰試験を受けようとしていた。

NASAの幹部たちが目を光らせる中、プールサイドで運命の時を待っていた日々人は、事前に六太から渡された『お守り』を見つめる。そのお守りとは、プリティ・ドッグの手鏡だった。手鏡は三面鏡になっており、肉球を押すとパカッと鏡が開く仕掛けになっていた。そしてそこには、六太からの小さなメッセージカードが入っていたのだ。

『調べてみたところ、PDの発作対策として、自分を客観視するといいらしい』

『客観視』という言葉に、日々人は子供の頃、六太と発見した出来事を思い出す。三面鏡で自分を見ると、誰かの目で見ているように感じられたのだ。この手鏡は、日々人にとってもってこいのお守りだった。

ついに入水の時——。
宇宙服を着た日々人は、管制官の指示でプールの中に沈んでいた。底に着いても発作はなく、出だしはうまくいったようだった。しかし、問題はこの後。

日々人は試験中ずっと監視され、ダイバーたちに囲まれ、動きづらい宇宙服の閉塞感の中、薄暗い水中で作業をするのである。今の日々人は、いつ発作が起きてもおかしくない状況だった。

そして、突然日々人の耳元で警報が鳴る。
トラブルが起きたと思わせるグリーンカードで、日々人のヘルメットのディスプレイに、『二酸化炭素濃度が上昇中』と表示されたのだ。トラブルを見越していた日々人は、慌てず正しい処理をする。
だが、なぜか警報が消えない。
実はさらに、NASA幹部・ゲイツによって、スタッフにも知らされていない、極秘の危険演出が行われていたのだ。鳴りやまぬ警報の中、平静を保とうと、努めてなにもないよう振舞う日々人。

『来んじゃねーぞ! PD野郎!』
焦りの中でふと腕を見ると、その視線の先には、六太に貰ったお守り『PDの手鏡』があり——?

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