宇宙兄弟

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#79

2013年10月26日
「オリガとヒビトとガガーリン」

月での事故がきっかけで、パニック障害となってしまった日々人。ロシアで極秘にリハビリ訓練をしていたところ、JAXAから突然の帰国命令が届く。リハビリに時間がかかっているという理由で、『安全スーパーバイザー』として働くよう、辞令されてしまったのだ。

このことは、日々人を指導していたイヴァンにも遺憾だった。イヴァンはどうしても、日々人を治してやりたかったからである。実は宇宙飛行士だったイヴァンの父親も、日々人と同じパニック障害だったのだ。だが意義を申し立てたくても、ロシア人の彼に、日本人の日々人の処遇は変えられない。
悔しい気持ちを抑え込む日々人に、イヴァンは言う。
『今は耐えるしかない。辛抱強く、復帰することだけを考え続けろ——』と。

その夜——。
帰国のため荷物をまとめていた日々人の部屋に、思わぬ来客があった。それは、泣きはらした顔のオリガだった。日々人の処遇を聞いたオリガは、居ても立ってもいられず会いに来てしまったのだ。

「これ……あげる」

オリガが差し出したのは、日々人が観たがっていた、『オリガのダンスの成長記録』の続き。たまに観て、自分のことを思い出して欲しいというオリガの願いのようだった。

オリガを家まで送る道すがら——。
通りかかった公園で、オリガは自分より背の高い、ガガーリン像を片手で示した。ユーリ・ガガーリンとは、世界発の有人宇宙飛行を成功させた、ロシアの宇宙飛行士である。オリガは、イヴァンに聞いたというガガーリンの豆知識を披露。しかし最後までは話さず、「続きは次回、日々人がまたロシアに来た時に」と笑顔を浮かべた。

そして、オリガとの別れの時——。
「じゃね! イエーイ!」
ヒビットの決め台詞を言いながら、みるみる遠ざかっていくオリガ。彼女を最後まで見送った日々人は、自信が持てない自分を悔やんでいた。

『パニック障害を治したら……今度は堂々と、またロシアに来る——また会いにくるよ、オリガ——』

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