宇宙兄弟

今までのお話バックナンバー一覧

#76

2013年10月5日
「オリガ」

月での事故が原因で、宇宙服を着て緊張状態に置かれると、発作に襲われるようになってしまった日々人。このままでは宇宙での船外活動ができず、希望する月ミッションには加われない。そのため日々人は、兄・六太には病状を伏せたまま、かつての自分を取り戻すべく、極寒の地・ロシアへと向かった。

そこで待っていたのは、日々人のことをヒビチョフと呼ぶ、宇宙飛行士・イヴァン・トルストイだった。ロシアの英雄でもあるイヴァンの家に招待された日々人は、彼の妻・エミーリアや、その友人たちに囲まれ、酒を飲み交わし、楽しい時を過ごす。
「心の健康のためには、ある程度の酒は必要なのだ!」
酒好きのイヴァンは上機嫌だ。

しばらくすると、そこにイヴァンの娘・オリガ(15歳)が帰宅した。そっけない挨拶をし、まるで日々人に感心がないかのように去っていくオリガ——だったが、彼女の頬には緊張の汗が流れていた。
「バヤイ……」
実はオリガは、アニメ『Mr.ヒビット』のモデルになった日々人の、大ファンだったのだ。

数日後——。
いよいよ日々人は、ロシアの宇宙センターで、訓練を始めることになった。最初の訓練は、『与圧服を着た状態で、10メートル歩く』、というだけのもの。しかし日々人は、その状態で一歩も歩くことができない。日々人の脳内では、月面で遭難し、酸素がなく苦しんだ時のことがフラッシュバックされてしまっていたからだ。耐えきれず、力なく倒れる日々人……その顔は、蒼白だった——。

日々人の症状は、ヒューストンにいた頃よりも悪化していた。環境を変えれば、変われると思っていただけに、ショックは大きい。

「失敗の回数が増えれば増えるほど……俺は、宇宙飛行士じゃなくなっていく気がする——」

アニメのヒビットとは違い、今の日々人には勇気と元気がない。思い詰めた日々人は、これ以上病状を重くしたくないと、指導教官であるイヴァンに、訓練の内容変更を申し込むが——…?

バックナンバー一覧はコチラ