宇宙兄弟

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#73

2013年9月14日
「道なき月に道を」

月での事故が原因で、宇宙飛行士として致命的な、パニック障害となってしまった日々人。その治療に専念するため、家族や、とくに六太には内緒で単身ロシアへと向かっていた。

一方六太は、いままさに、バトラー室長と吾妻、NASAの役員たちに、『崖や谷に落ちない、月面バギーの改良案』のプレゼンを始めようとしていた。この案が通れば、六太も月の訓練に参加できるかもしれない。緊張した面持ちで提案したのは、「道なき月面に道を映し出す」という大胆な発想だった。

以前、ミラクルカー社という自動車会社に勤めていた六太は、渋滞する日本の道路を改善しようと、『空飛ぶ車社会』という企画を進めていた。しかし、車は飛ばすことができても、道路は飛ばすことができない。そこで考えたのが、『それぞれの車のフロントガラスに、架空の共通道路を映す』というものだった。結局この企画は上司には現実味がないと却下されたが、六太の元後輩・技術チームの中川と糸井は諦めず、フロントガラスに道を映すことができる『カーナビ・フロントガラス』の研究を続けていた。

そして現在、二人の頑張りが実り、すでにその技術はほぼ完成。これを応用すれば、月面ローバーのフロントウィンドウに道を映すことが容易にできるというのだ。

さらに、六太の発表は続いた。
JAXAに協力を要請したところ、『かぐやII』が観測した地形情報から作った、最新の月面3Dマップも提供してもらえるというのだ。この3Dマップは、月の35パーセントの範囲までであれば、クレーターの位置や深さまで、かなり詳細に閲覧することができるという。そのデータを使用すれば、月面ナビのプログラムがすぐできるのである。

プレゼンを終えた六太の案は、開発予算まで考慮した、文句なしの内容だった。

六太はさらに言葉を続ける。
「JAXAの成果と、開発会社の技術、あと、NASAに熱意さえあれば、我々のこの案は、実現できます!」と――。

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