宇宙兄弟

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#72

2013年9月7日
「日々人の障害」

月での遭難が原因で、パニック障害となってしまった日々人は、このことをシャロンにだけは話していた。

『船外活動ができないうちは、月ミッションへの参加はできない――』
『治るかどうか、わからない――』
重い口調で話す日々人に、シャロンは微笑んだ。
「治るわよ。ヒビトなんだから」
シャロンの後押しを受け、心を少し軽くした日々人。
治療のため、六太や家族には内緒で、単身ロシアへ赴こうとしていた。

その頃、六太とNASAの技術者たちは、月面ローバーの改良案について相談していた。月でのハンドリングやブレーキを改善するためには、浮かないように車体を重くするしかない。だが月へ物を送るには、何百億円もの大金がかかるようなのだ。現実的には不可能な案しか出ない中、不意に六太が閃いた。
解決できるかもしれない案を思いついたかもしれない――らしいのだ。

すぐさま六太は、以前勤めていてクビになった、ミラクルカーコーポレーションに電話をかけた。昔自分が企画した『飛行自動車』と『フロントガラス』の設計を思い出し、ローバーの改良に使えると考えたからだ。話しをしていると、電話の相手は元同僚から、六太をクビにした張本人・間寺役員に代わった。間寺の要件は、娘が新田のファンなので、サインが欲しいということ。少なからず宇宙に興味があると知った六太は、これをチャンスだと思い、すかさず協力を求めた。

「車のプロの実力をぜひ、宇宙で役立てたいんです!」
六太の言葉に気をよくした間寺は、NASAのローバー開発に、格安で協力することを約束してくれた。
さらにJAXAの星加とも連絡を取った六太は、具体的な改良案を完成させ、ついにプレゼンテーションまでこぎつけた。もしこの改良案が実現可能と判断されれば、今度こそ六太にも月への訓練に参加できるかもしれない。

期待を膨らませバトラー室長らを待つ六太たち。
その手には、ダンボールで作られたローバーの模型があり――?

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