宇宙兄弟

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#71

2013年8月31日
「リハーサル」

次なる六太の目標は、月ミッションへの道を開くため、月面の谷に落ちても壊れないバギーか、もしくは落ちないバギーを作ること。なにか良い案はないかと模索していたある日、六太は日々人と、兄弟並んで雑誌の表紙に載ることになった。

撮影場所は、古い倉庫の中だった。
倉庫の中に入ると、まるで月面のような、カッコいい撮影ステージが広がっていた。表紙写真のコンセプトは、『日本人ムーンウォーカー第1号南波日々人と、その後を追って月へ向かう兄の六太、同じ舞台で追いつ追われつがんばっているライバル兄弟をテーマに、今の二人の姿を通じて世の働く人々にメッセージとして感じとってもらおう』というもの。

そのため日々人は宇宙服でビシッと決めていたが――六太の衣装は変だった。元サラリーマンが宇宙飛行士になって今まさに宇宙を目指しているという表現のため、六太の衣裳は、上半身は宇宙服なのに、下半身はズボンと革靴だったのだ。

撮影が始まると、六太は日々人の様子がおかしいことに気付いた。
宇宙服のヘルメットの中の日々人は、汗をにじませ、険しい顔をしていたのだ。
心配する六太に、日々人はなんでもないというが――……?

日々人、ロシアへ出発の日――。
新たな訓練のためロシアへ行く日々人を見送った六太は、雑誌の編集者からもらった写真を見ていた。それは、月面に2人が並んでいる写真。

『とりあえず、リハーサルは終了だな、日々人――』
兄弟そろって月面に立ちたい、すぐに追いついてやる、六太の顔はやる気に満ちていた。

一方、日々人は険しい表情で2人の写真を見ていた。
六太に知らせていないが、日々人の新しい訓練の内容は、『パニック障害を克服する』ためのものだったのだ。月での遭難が日々人の心に恐怖を植え付けてしまい、危険性を伴う状況で宇宙服を着ると、発作が出てしまうのだ。しかも、船外活動ができないうちは、月ミッションには加われない。
事態はかなり深刻で――!?

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