宇宙兄弟

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#57

2013年5月11日
「技術者のスイッチ」

六太たちE班の宇宙飛行士候補生は、「カムバックコンペティション」に挑戦するため、決められた予算内でキャンサット作りに励んでいた。

しかし、パラシュートがうまく開かなかったり、ローバーが障害物を越えられず、すぐ止まってしまうという問題が発生してしまう。
みんなが頭を悩ませる中、六太は車づくりの知識と大胆な発想力を駆使し、プログラムの変更とタイヤをスポンジで作ることで打開しようとする。
スポンジならギュッと縮めて筒に入れられ、走る時には十分な大きさに膨らむ、軽いし安いし、加工もしやすい。着地の時のショックもやわらげることができ、いいこと尽くしである。

これまで様子を見ているだけだったピコは、自分ができなかった発想と、失敗を乗り越えて良い物を作ろうとする六太の考え方に衝撃を受けた。

「パラシュートの『パ』ぐらいは教えてやってもいいかな」

ピコはパラシュートの布を素早くキレイに畳みながら、作業の心構えを話し始める。
それは、キャンサットが本物の宇宙船と考え、自分の隣にいる宇宙飛行士を一緒に乗せて打ち上げるつもりで、全部の作業をやれということ。
そして、隣の男の命を預かったつもりで、パラシュートは女子が畳む方がより良いことを教えた。

「パラシュートってのは、愛で開く」

その昔、戦場へ行った夫やボーイフレンドに無事に帰ってきて欲しいという願掛けの意味で、パラシュートが開く生命線になる収納作業は女性がやっていた。
成功率を少しでも上げるため、ゲン担ぎとして女性がやったほうが良いらしいのだ。
ピコのアドバイスと、六太の大胆な発想のおかげで、E班にもようやく成功の兆しが見えようとしていた。

その頃、宇宙では――。
吾妻たちの乗る宇宙船・ルーニエ2号が、月周回軌道に到着し、着陸船ナウカによって、無事月面に降り立っていた。
数時間後には、ムーンベースに滞在している日々人たちCES―51のクルーとの対面果たす予定となっており――?

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