宇宙兄弟

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#54

2013年4月20日
「俺には運がある?」

サバイバル訓練、5日目の夜――。
六太は焚き火を眺めながら思っていた。

『……なんか見えるな……いろんなもんに』
六太の視線の先には長いサボテンがあり、それが手前の焚き火の形と合わさって、ロケットと噴射炎に見えてきたのだった。その光景から六太は、日々人を乗せたロケット・マルスワンが飛び立つ姿と、その時一緒にいたデニール・ヤングの言葉を思い出す。

『――空は誰の物でもない。だが人生は自分のもの。人生はコントロールがきく』

「あれから俺は宇宙飛行士になって……少しは人生のコントロール、効いてんのか? いや……俺は……どこへ行くんだろう……」
さらに六太は、宇宙飛行士としての一歩を踏み出し始めた日のことを思い出していた――。

『我々JAXAは君を――宇宙飛行士として迎えます――おめでとう! 君には運がある!』
宇宙飛行士選抜試験・合格発表の日、六太はJAXAの職員・星加に呼び出され、近所の公園で合格結果を聞いたのだ。

そしてその数カ月後――。
六太は日々人と交わした『一緒に月へ行く』約束を果たすため、ヒューストンでの合同基礎訓練へ望んでいた。合同基礎訓練とは、各国の新人宇宙飛行士候補生がNASAに集まり、一緒に同じメニューの訓練をこなすというもの。ヒューストンへ着くと、さっそくNASA主催の歓迎会で、新たな仲間・占いがことごとく当たるという、アマンティと出会った。軽い気持ちで六太も占ってもらったのだが、明らかに不穏な眼差しを見せるアマンティに不安が募る。一体、六太の未来になにをみたというのだろうか――?

――その謎が解けぬまま、現在。
明日はいよいよサバイバル訓練の最終日となっていた。
どこまで順位を上げられるかが勝負なのだ。
にも関わらず、ぶるっと身震いする六太。
どうも体調がよろしくない。
『もしかして……このことか……?』
病は気からと信じたいものの、六太はアマンティの不安な占い結果を思いだしていた――。

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