宇宙兄弟

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#39

2013年1月6日
「月の錯覚」

見事、宇宙飛行士の候補生として採用された、六太、せりか、ケンジ、絵名、新田の5名は、JAXAの入社式のあと、理事長である茄子田から、人という字に例えられた深い話を聞かされていた。

「人という字は、人と人とが互いに支え合って生きている! ――みなさんも一度は思った事でしょう。支え合ってるか!? ――と!』

茄子田はホワイトボードに書かれた「人」の線の短い方を指し、言葉を続けた。

「どぉ~~見てもこっちの負担が大きいだろうと! つまり私が言いたいのは、人という字は支え合っているのではない。支える者がいて、その上に立つ者がいる」
そしてもう一度「人」の線の短い方を指し――。
「我々JAXA職員のほとんどはこっち」
今度は「人」の線の長い方を指した。
「あなた方宇宙飛行士は――こっちです!」

茄子田は、ほとんどの職員は飛行士を支える発射台に過ぎないが、飛行士たちを宇宙へ送り出すためならば全力で支えていく覚悟がある、と六太たちに力説したのだ。
候補生たちは、これから約1カ月間、新入社員研修と日本国内でのオリエンテーションを受け、そのあとNASAでの基礎訓練を1年半から2年間続ける予定となっている。
その訓練の道中で気付くであろう、支える側の人たちの想い。
茄子田の言葉で、六太たちの気持ちはきっちりと引き締められていた。

一方、月では無人探査機・ギブソンとの通信が途絶えていた。
管制から連絡を受けた日々人とダミアンは、ギブソンを見つけ出して修理するため、基地を離れることとなった。

バギーで月面を走る日々人たち。
会話は弾んでいたが、その目は空気がないせいで鮮明に見えすぎ、錯覚を起こしていた。
大きさを比較できる物が何もないため、遠近感もうまくつかめず、慣れない視界に戸惑う二人。
そして――。

日々人たちが乗ったバギーが突然の衝撃に見舞われてしまう。
不覚にもタイヤの下の地面がなくなり、バギーは深い谷底へと飛び出していたのだ――。

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