宇宙兄弟

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#28

2012年10月14日
「ドーハのきせき」

打ち上げ4日前。
六太たち家族は、月へ向かう日々人と最後の食事をするため、ケネディ宇宙センターに来ていた。そこで六太は、日々人に一枚のDVD―Rを渡す。
ケースに張られたラベルには、『2006年ドーハのきせき さつえい 南波日々人』と書かれており、なんとそれには、UFOの映像がしっかり記録されているようなのだ。

2006年の夏――少年時代。
六太と日々人は、学校で『UFOを見た』と言っても誰も信じてくれないことに、大きな不満を感じていた。
『証拠があれば信じるはず!』と思った六太たちは、UFOを撮影するため、毎晩高台へ足を運ぶことを決める。だが、待てどもまったくUFOは現れなかった。
そしてある日、六太が日増しにキズを作ってくることに日々人が気づく。
六太は『電柱にぶつかっただけ』と言うが、本当はUFOの証拠を見せろと、いじめっ子グループに絡まれていたのだ。

UFOを見た日から3カ月後。
日々人は六太の13歳の誕生日に、一枚のDVD―Rを渡した。
タイトルは『ドーハのきせき』。
早速その映像を見ると、映し出されたのは、釣り糸にぶらさがった作り物のUFOの姿だった。

呆れる六太と対照的に、日々人は自信満々な顔で言った。
「これでもういじめに遭ったり、電柱にぶつかったりしなくなるよ」
日々人は、六太がUFOの証拠が原因で殴られていると知っており、自ら作ったUFOを真剣に撮影したのである。

その後日――。
今度は日々人がいじめっ子グループに絡まれていた。
六太は日々人の作った映像を見せておらず、いじめっ子たちは早くそのUFOの証拠を見せてみろとバカにしていたのだ。

その光景を目にした六太は、慌てて駆けつけ日々人の前に立った。
そして――。

「お前は手ぇ出すなよ、強えーんだから――むかつくヤツが現れたら、かわりに俺が――頭出してやる!」

そう言い終えた後、六太はいじめっ子のリーダー目掛け、勢いよく頭を突きだしたのだった――。

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