宇宙兄弟

今までのお話バックナンバー一覧

#24

2012年9月16日
「最悪の審査員」

2か月後に行われる最終試験を前に、六太はヒューストンへと来ていた。

「俺も早く訓練とかして格好いい汗かきてー!」

日々人はNASAで宇宙飛行士の訓練だが、自分はオジーのところで芝刈り作業なのだ。
六太はまたしても、弟と兄である自分を比べてしまっていた。

NASA・ジョンソン宇宙センターでは――。
職員が日々人たちに月面任務について説明をしていた。
月面での長期滞在で問題は、太陽風や宇宙線などの放射線と小隕石である。
むき出しの住居モジュールでは被ばく量を抑えきれないので、これを大量にカットするために、モジュールをレゴリスと呼ばれる月の砂で、覆い隠す作業が必要になるのだ。

その時に使用するのが、レゴリス散布ローバー『スパイダー』と、月面用の『ショベルカーアームストロング』。
CES-51のクルーである、フレディ、バディ、日々人は、分厚い説明書を渡され、ローバーの操縦を6時間でマスターするよう言われたのだが――。
日々人は説明書を読まず、いきなりローバーに乗り込もうとしていた。

「やった方が早い!」

一方、六太も月面ローバーに近いものに乗っていた。高度なテクニックを要する芝刈り機である。
経験があるオジーでさえ、横転しそうになるくらいの難度が高い乗り物だが、六太も説明書を読まずに運転をはじめた。

「こーいうのは……やった方が早い!」

昼食時、六太はジェニファーに、日本好きの宇宙飛行士、ローリー・クモオを紹介される。
六太が最終試験まで残ったことを祝う2人だが、1つ気になることがあるという。
選考者の1人である吾妻滝生が、日々人のことを良く思っていないというのだ。
吾妻とは、日本人一宇宙にいた宇宙飛行士である。
本来なら吾妻が先に月に立つはずだったが、なぜか日本人初の月面着陸者には日々人が選ばれてしまった。
ジェニファーいわく、日々人を妬んでいるであろう吾妻がいる限り、日々人の兄である六太は不利、ということだが……?

バックナンバー一覧はコチラ