宇宙兄弟

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#23

2012年9月9日
「親父と息子とムッタクロース」

最終試験のためにヒューストンに行くのは、8人だと発表された。
男性枠の最後の1人に滑り込んだ六太だが、日程が決まらないのかJAXAからは連絡がなく、選考に落とされたケンジのことも気になっていた。
そして、若干だがほかにも気になることがあった。
六太の合格祝いのはずなのに、なぜか六太のケーキだけ角度が薄いのだ。

「ケーキの角度は日頃の働きに比例する。男なら、親父より稼げ」
「重いわ~お父さんの言葉!」

ヒューストンへ行くまで、バイトをしようと決意する六太だった。
季節は冬。
六太が雇われたのは、サンタクロースの格好をして子どもと記念写真を撮るアルバイト。
バイト終了後、JAXAの鶴見から、最終選考は2カ月後と電話がある。
日々人たちCES-51クルーの打ち上げをみんなで見るというのだ。
六太は鶴見に、ずっと気になっていたことを尋ねた。

「ケンジは……真壁君は何で選ばれなかったんですか? 僕が残されたのに彼が残らないっていうのはなんかこう不自然で……」

しかし電話口から聞こえたのは、意外にも鶴見の笑い声。

『真壁君も君と全く同じことを訊いてきたよ』

男性枠は1つのはずだが、ちゃんとケンジも受かっているという。
実は9人選ばれるはずだったが、辞退した男性がいたのだ。
それは、B班で一番優秀だった男、手島有利だった。

『僕は――自分の父には逆らえますが、自分のやりたいことには逆らえません』

手島の父は宇宙飛行士になりたくて3回も試験を受けた人だという。
宇宙飛行士になることは父の強い意志だったが、手島自身のやりたいことは違っていた。
手島は、悩んだ結果、自分の好きな地球外生命体関係の仕事をすることに決め、辞退したのだ。
六太は、どうせならジョンソン宇宙センターを見学しつくしてやろうと考え、先にヒューストンヘと降り立っていた。出迎えたのはAPOと日々人。

『俺の言った通りだろ。ムッちゃんはちゃんと選ばれてここに戻ってくるって』

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