宇宙兄弟

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#19

2012年8月5日
「さらばの前の日」

閉鎖ボックスでの生活も残り2日。B班では、それぞれ自分の好きなものについて談話していた。手島は異星の海洋生物を想像したデッサン、北村は今読んでいるSF小説、そしていつの間にか富井も加わり、みんな楽しげな表情を浮かべていた。
ケンジがうまくきっかけを作ったことにより、ギスギスしていた雰囲気が、ようやく改善されたのである。

『これでよかったんだ――最初から。終わる前に気づけてよかった』

そんなB班の様子を見ていた管制では――。
星加が満足気な言葉を漏らしていた。「これが、見たかった」星加は、ケンジか溝口、どちらがリーダーとしてB班の雰囲気を作り出すか、敢えて2人にはグリーンカードを出さずに待っていたというのだ。

「種明かしをしてやろう。2人にとっては――救いのグリーンカードだ」

一方、A班では。

「良いニュースと、悪いニュースと、あと、微妙なニュースがあります――どれから聞きたい?」

六太がみんなを集め、重大なことを発表しようとしていた。悪いニュースは、明日の食料がないこと。良いニュースは、六太が小麦粉と調味料を発見したということだった。

「これで明日はうどんが食えるぜ、みんな!」

楽しげにうどん作りをはじめるA班のメンバー。六太が、『作り方は天文学者・シャロンに教えてもらった』と明かすと、シャロンと親しいことに一同羨ましげな声をあげた。六太は感動した。なぜなら、子どもの頃天文台に友達を誘っても誰も興味を示さず、誰もついて来てくれなかったのだ。

様々な宇宙の話をしながら、六太は目頭を熱くする。

『ここにいたんだ――誘ったら、喜んでついて来てくれそうな連中が……――ここにいたんだ!』

しかし――……。

「そういえば――もう一つの微妙なニュースって?」

福田の言葉に、六太がゆっくりと、神妙な顔で答えた。

「……ニュースっていうより再確認で……明日、必ず……この中から二人、選ばなきゃいけない……」

楽しい時間には、限りがあったのだ――。

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