宇宙兄弟

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#18

2012年7月29日
「かぺ!けんじ!」

 閉鎖ボックスでの試験もあと数日。A班はグリーンカードの存在に気づくことができた六太のおかげで、もと通り和気あいあいとした雰囲気に戻っていた。だが食料不足という問題は続いており、ジャンケンで食事を取り合うことに。

「ジャンケンを超える公平な方法はあらへん。負けても文句言うなよ!」

古谷はそうハッキリとした口調で言うのだった。

 そして、ついに六太もグリーンカードデビューをすることになる。それは『唐突に叫びをあげ、ほかのメンバーを驚かせなさい』というもの。初のグリーンカードに張り切っていただけに、その内容にガッカリする六太。
「なんか俺のだけ方向性が違う……」

 一方B班では、――また新たな問題が起きていた。パソコンに記録していたテストの点数データが、すべて消えてしまったのだ。溝口はここぞとばかりに、ライバル視しているケンジを犯人扱いする。しかしケンジは、冷静に自分の意見を伝えた。

『2人選んでくださいとは言われたが、選ばれた2人が宇宙飛行士です、とは誰も言っていない――JAXAが見たいのは、誰かが選ばれた結果ではなく、どんなふうに受験者たちが選ぶのかっていうことだ』

と。その言葉に同じ班のメンバー・手島も賛同するが、溝口だけは違った。手島とケンジに、選ばれても辞退するよう迫ったのだ。

 溝口の横暴とも取れる言動に、険しい表情を浮かべるケンジは、ひとりバスルームにこもり、心を落ち着かせようと耐えていた。

『帰りたいって思うのは……俺だけか……?』

ケンジは、娘・風佳が自分を送り出す時に発した、『かぺー!』という言葉を思い出す。どんな意味だろうと考えていたところ、便座での排便に挑戦している風佳が、がんばれと言われ、それを反復するように『かぺ』と言いながらしていたことに気づいた。風佳の期待に、やる気をみなぎらせるケンジ。

「がんばれ、か……ちゃんと意味もわかってて――……しょーがない、かぺるしかないな!」

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