宇宙兄弟

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#13

2012年6月24日
「3次元アリ」

 せりかに下の名前で呼んでもいいと言われ浮かれる六太。さっそく呼ぼうとした瞬間――遮るように現れたのは、今までトイレに入っていた新田だった。

「ちょっとそこ通してよ、……お兄ちゃん。」

 自分を『お兄ちゃん』と呼ぶ新田に対し、ムッとする六太。しかしすぐにニッと親指で自分を指すと、軽やかな笑顔を浮かべた。

「おい、新田君! 俺のこと……下の名前で呼んでくれていいんだぜ? 別に気に入ってないけど。」

 少しの間、無言で六太を見る新田だったが――。

「わかった――次の課題で俺に勝てたら……呼んであげるよ、……お兄ちゃん。」

 次の課題は、ランニングマシンで走りながら5分間で計算問題を何問解けるかという『計算ランニング』だった。この課題で新田に勝ち、下の名前を呼ばせたい六太は、唯一の特技・エアそろばんで挑む。しかし結果は惨敗。そろばんをリアルに再現しすぎてしまい、走っている最中動いてまったく使い物にならなかったのだ。

「普通に計算した方が早かった……」

 うなだれる六太に対し、新田は余裕の表情。

「残念だな、お兄ちゃん。……また明日、勝負してあげるよ。」

 何も言い返せない六太、悔しげな表情で――。

「くそう……負けねえぞ新田……! この2週間以内に絶対……『ムッちゃん』と呼ばせてやる!」

 さらに続く課題は――難題だった。『多額の予算がかかる宇宙開発事業を非難する辛口キャスターを納得させられるような文章をつくれ。』というものだったのだ。みんなが悩み考える中、六太は白紙にスッと一本の線を引くと、その線をじっと見つめた。子どもの頃日々人と聞いた、宇宙飛行士・野口聡一さんの『3次元アリ』の話を思い出していたのだ。そして色々考えた結果、六太が出した文章は『白紙』。『抗議はしない。』という答えを出したのだ。

「日々人がいる。もうすぐ、日々人が月に立つんだ。」

誰に批判されたって、日々人が帳消しにしてくれる。そう確信したゆえの六太なりの答えだった――。

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