宇宙兄弟

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#12

2012年6月17日
「私の名前は伊東せりかです」

 A・B・C班、それぞれの閉鎖ボックス内で出された最初の課題は、『いま何時でしょう?』というクイズ。だがA班のメンバーは早々に意見が分かれてしまう。福田・せりか・新田・古谷の4人がAM6時頃と答える中、六太だけはAM3時頃と答えたのだ。しかし六太は勝算がある様子でエアそろばんを弾き発言する。

「実は俺、みんなの知らない数字を知っているんだよね。」

 六太は『バスが走った距離』を知っており、時速も体感でわかるため間違いないと断言したのである。それを聞いた福田やせりかは関心するが――……六太の心中は複雑だった。

『ま、まただ……。またやってしまった』

 実はアメリカのテレビ番組に出演したときのように、六太はまたカッコつけるべく、逆算してまでウソ話しをでっちあげたのである。本当はメーターなんて見ておらず、運転手のヅラを再確認したとき、たまたまAM2時を表示しているバスの時計を見ただけなのだ。管制から発表された正解は、六太の言った通りAM3時8分。
『なあ、教えてくれよオジー。これも……俺の実力ですか……?』

 閉鎖ボックス2日目。食事を終えた各班は、最終日にどうやって2人を決めるかを話し合っていた。B班は点数制、C班は投票箱に毎日MVP2人の名前を投票する方法、A班はまだお互いのことを知らないため、誰がふさわしいか自然とわかるまでは決めないということになった。

 A班のメンバーは、まずお互いを知るため、改めて自己紹介をすることにした。和気あいあいの空気に気が緩んだのか、六太に『せりか』と下の名前で呼ばれたせりか。ふと、小学校の頃、自分の名前の意味を父に尋ねたことを思い出していた。『せりか』という名に意味はないが、とても大切につけられた名だということを――。

 照れを隠しながらも名前をほめてくれた六太に対し、せりかは『せりか』って呼んでくれていいですよと伝えるのだった。
「自分の名前、気に入っているんです。」と。

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