宇宙兄弟

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#08

2012年5月20日
「白煙天国」

 消火器男に襲われピンチを迎えた六太だったが、結果、市民を救ったヒーローとして人気者になってしまっていた。六太を称賛する声は一斉に広がり、全国ネットのテレビにも出演。一緒にいたオジーも『ムッタが我々を助けてくれたんだ!』と熱弁をふるった。司会者もあとに続く、『六太が犯人を倒すことができたのは、弟・日々人と同じ宇宙飛行士を目指しており、目が見えない場所でも動けるよう日頃から訓練をしていた成果なのだ』と。ますます盛り上がる観客の中、六太だけは冷や汗を浮かべていた。

「違うんだよみんな、本当は全然違うのよ。――あの時、俺は……」

 司会者からマイクが渡され、ついに六太のヒーローインタビューがはじまる。その心中は、『本当は転んだだけなんだ……本当のことを言った方がいい』と葛藤していた。だが観客の中に美女を見つけてしまい、美女の前でいい格好をしたかった六太は、思わず、『正義の前でウソがつけない』と大ぼらを吹いてしまっていた。

 テレビ出演が終わり、トイレでオジーに本当のことを話す六太。実は犯人を倒したのは日々人の飼い犬・アポであり、転んだとき偶然犯人に頭突きをくらわしてしまっただけなのだと。しかしオジーは笑う。『全部知っていた』と言うのだ。オジーは六太がアポを助けに行った姿を見ており、その勇気に六太がうまくいく方に賭けたのだと。さらにオジーは続けたる。『運も実力のうちだ!』と。

 数日後、両親からのビデオメールで、JAXAの2次審査に無事通過したことを知る六太。消火器男の一件は日本でもテレビ放送されており、それがJAXA内でも『勇気ある行動をした南波六太』として、よい方向に動いたようなのだ。

 その夜、帰国の準備をしていた六太は、ふと家具の下に封筒が隠されているのを発見する。

「どれどれ、兄がチェックしてやる――……ん?」

少し読み、一変して神妙な面持ちになる六太。それは日々人が書いた、『遺書』だった――。

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