宇宙兄弟

今までのお話バックナンバー一覧

#07

2012年5月13日
「拝啓日々人」

元後輩からの電話で、『元上司が六太の悪口をあることないことJAXAにぶちまけた』と聞いた六太は、興味のないゴミ情報やゴミ知識を一心不乱に集める『コロコロムッタ』へと変身してしまっていた。『六太は嫌なことがあると変身することがある』、それを知っていた日々人は、なにかあったのかと問い詰める。最初は受け流す六太だったが、どうせこの先わかることだからと覚悟を決め、重い口を開いた。

「――92%、俺、落ちた」

さらに六太は続ける。ドーハの悲劇生まれの自分には運がなく、次の試験だっていつあるかわからない、宇宙飛行士の夢は諦め、別の仕事を探す――子どもの頃にJAXAの職員が言っていた言葉、『宇宙飛行士になるには強い運も必要なのだ』と。それを聞いた日々人は言い放った。

「諦めんなよ。もし諦められるんなら、そんなの夢じゃねえ」

ズキリ! ……胸が痛む六太。日々人に言われた言葉は、兄として自分が言ってやりたかったものだったのだ。

 翌朝、六太はオジー夫妻とレストランに来ていた。日々人が行っている『目隠し訓練』を実際にやってみせるため、六太は両手で目を覆い隠し、店にいる客の様子を瞬時に細かく言い当てた。おおはしゃぎするオジー夫妻だが、六太は悲観的だ。

「こんなことが出来たって宇宙飛行士になれるわけじゃない。俺には運がないから……」

 六太がため息をついた直後、突然店内が慌てふためいた。なんと六太たちがいるレストランが、いま巷を騒がせている『強盗犯・消火器男』に襲われてしまったのだ。モクモクと白い煙が立ち込める中、六太は強く確信した。

「俺には運がないと言ったが訂正する――俺はなにかと不運に縁がある!」

 一方JAXAでは、星加が『六太は弟のために頭突きをした』という真実を審査員たちに伝え、合格を再検討して欲しいと説得していた。そこに職員の一人が駆け込んでくる。六太がアメリカで大変なことになっているというのだ――!

バックナンバー一覧はコチラ