2014年3月22日放送終了

インタビュー

○大西卓哉JAXA宇宙飛行士と南波六太役、平田広明の豪華対談が実現!

 4月から土曜日午後5時30分枠へと引っ越して絶賛放送中の人気アニメ「宇宙兄弟」。このほど、宇宙飛行士の大西卓哉さんがアフレコを行う都内スタジオを訪れ、六太役の平田広明との豪華対談が実現した。同作品に全面的に協力しているJAXA(宇宙航空研究開発機構)。これまでも宇宙飛行士の野口聡一さんがアフレコに挑戦したり、宇宙飛行士の星出彰彦さんが世界で初めて宇宙からアフレコを行ったりと様々な夢の企画が実現してきた。今回、米・ヒューストンで訓練中の大西さんが一時帰国。タイミングが合って、大西さんはアフレコの現場に応援に駆け付けた。初めての宇宙飛行を目指し訓練中という共通点がある大西さんと六太。そんな同じ立場にある2人の対談は六太役の平田さんが大西さんに色々な質問をする形で進行。初対面の2人はすぐに打ち解け、和やかムードの対談となった。


進行
「宇宙兄弟はご存知ですか?」
大西
「原作は読んでいます。アニメはアメリカに住んでいるので放送はないんですけど、野口飛行士と星出飛行士が出演された回だけは拝見させて頂きました」
進行
「ご覧になった感想は?」
大西
「原作に忠実だと思いました。野口さんと星出さんのエピソードはアニメオリジナルですけど、ご本人役で登場されて、すごく自然体でした。声優の皆さんもイメージ通りの声で、すごく良いと思いました」
平田
「おっ、イメージ通り(笑)」
進行
「好きなシーンはありますか?」
大西
「一番好きなのは選抜試験の閉鎖環境試験のシーンです。閉鎖環境試験が終わって全員で出てきた時、JAXAの職員がバァーと並んでパチパチパチって拍手で迎えるシーンがありますよね。現実もまさにあんな感じなんです。1週間の試験が終わって出てきた時、マイク越しに厳しい事をどんどん言っていた監視役の人たちが皆ズラーっと外に並んでいて『お疲れ様でした』って言ってくれるんです。その時はちょっと感動しましたね」
平田
「その光景と重なったんですね」


平田
「宇宙飛行士を目指したのはいつ頃からですか?」
大西
「具体的に宇宙飛行士という職業を意識したのは大学1年の時ですね。映画『アポロ13』にロケットが打ち上がっていく時、それを見送っている人たちが涙を流すシーンがあるんです。『宇宙兄弟』でもそういうシーンがありましたけど、そのシーンを観た時、いろんな人の希望や夢を背負って仕事に行く宇宙飛行士に憧れを抱いて、映画を観て家に帰って母親に『俺、宇宙飛行士になる』って宣言したのが仕事として初めて意識した時ですね」
平田
「六太と大分違いますね。六太はUFOを見たからです(笑)」


平田
「『宇宙兄弟』で描かれている選抜試験はリアルですか?」
大西
「リアルですね。唯一、違うのはグリーンカードで、現実ではありませんでした。ただ、私が試験を受けた時にはマンガでそのシーンが進行していて、僕らはいつグリーンカードが来るのか警戒していました(笑)。ずっと警戒している間に終わったんですよ。あれ、来ないよって…(笑)」
平田
「ところで白いパズルはあったんですか?」
大西
「白いパズルは10年くらい前、星出飛行士たちの選抜の時に行われていたものです。同じものはなかったんですけど、私たちの時は千羽鶴を折りなさいって課題があって、ひたすら鶴を折り続けました」
平田
「試験官は試験の結果ではなく、雑になっている所を見るとか、疑心暗鬼になったりしますか?」
大西
「本当にいろいろ考えますね。例えば鶴は4時間で100羽折らないといけない計算なんですけど、ノルマを達成するために雑に折ったらダメだろうとか考えながらやりました」
平田
「それ以外に一番印象に残っている選抜試験はありましたか?」
大西
「自己アピールですね。課題ボックスを開けると紙切れに自己アピールして下さいって書いてあって、準備期間は30分。特技がないので、どうしようと思って…。アカペラで歌でも歌うしかないかなと。たまたま順番が最後だったんですよ。順番に発表していくんですけど、皆すごい事をやるんですよ。1分間に腕立て100回とか…」
平田
「選抜試験だから日本人だけですよね?日本人って自己アピールが一番苦手な人種なのにすごいのを持ってくるんですね」
大西
「用意してたのかなって思うくらい。それで、3、4か国語で歌を歌う人が出てきて、もうカラオケはないなと思って(笑)。追い詰められて捻り出したのがミュージカルを観るのが好きだったので、好きなミュージカルの1シーンを演じる事。1人2役で、その後、“1人ミュージカル”って名付けられたんですけど、皆の前でやりました。今思うとムチャクチャ寒い(笑)。でも閉鎖環境中って、みんな独特の精神状態なんですよ。拍手喝采(笑)。人気投票みたいな事をするんですけど1位(笑)。それで受かったみたいな…(笑)」


平田
「変わった人とか、キャラクターの濃い人とか、そういうスタッフ、宇宙飛行士の仲間はいましたか?」
大西
「例えばNASAのフライトディレクター。キャプコム(宇宙のクルーと交信する人)の訓練を受けたんですけど、訓練なので現実のクルーと話すわけではなく、シミュレーションをやるんです。別の建物にいるクルー役を演じてくれる人と話すんです。とにかく、現実じゃないのでトイレが壊れたとか、2系統ある電源の1系統が落ちて半分停電とか、いろんな事が起こるんです。7時間くらいやるんですけど、隣にフライトディレクターがいて、厳しい人、怖い人も多いんですけど、ある日、隣に座ったフライトディレクターがとにかく陽気な人で、ひらすら話しかけてくるんですよ。こっちは今起きている事をまとめたり、いろいろやりたい事があるんですけど…」
平田
「デニールだ(笑)」
大西
「そうです、そういうキャラクターですよね」
平田
「飛行士仲間に変わった人はいましたか?月にオモチャを持って行っちゃう紫三世みたいな」
大西
「古川(聡)飛行士は真面目な方で、すごく尊敬しているんですけど…。先日、日本で公演した時に子供から『宇宙でオナラをしたらどうなりますか?』って聞かれたんですね。僕は匂いがどうなるかって事だと思ったんですけど、その後、この質問の事を考えていて、ギャグマンガでオナラをして飛んでいくシーンとかあるじゃないですか。ひょっとしてあの子はそれを聞いていたのかなって…。ある日、ジムで古川飛行士と一緒になったので『宇宙でオナラするとどうなりますか?』って聞いたら『ああ、その質問ですか。前に計算したんですが…』って…(笑)。計算したのか、古川さんらしいなと思って(笑)」
平田
「その真面目さはニコッとしちゃいますね。何で計算してみようと思ったのか聞いてみたいです」


平田
「一番辛かった訓練は何ですか?」
大西
「僕は訓練って基本的に厳しい、キツイものだと思っているんですよ。訓練ってそうあるべきだと思っていて、だからこそ、いざ宇宙に行った時にその経験が自分の背中を押してくれると思っているんです。厳しい訓練を乗り越えた事が最後の自信につながるんだろうなと。その中でも一番厳しかったのは野外リーダーシップ訓練。10人くらいのメンバーでチームを組んでアメリカの峡谷みたいな所に送り込まれて2週間くらいテント生活を送って、ずっと練り歩いていく訓練があるんです。サバイバル訓練みたいな感じですね。最初に水は2リットルだけ持たされて…。水の心配はいらない、こことここに行けばきれいな川があるからって地図に印がつけてあって、当然、初日からそこを目指していくわけですよ。そしたら、そのエリアは2週間くらい雨が降ってなくて、行ったらあるはずの小川が干からびていて初日は水が手に入らず。手持ちの水はすぐに使い果たして2日目は水がない。最後は一番谷の底に流れている泥水、本当に茶色い水を飲まざるを得ない状況になりました。一応、薬を入れて殺菌をして、気休めにバンダナで漉してはみるんですけど何も変わらない(笑)。匂いもすごいんですよ。あれはキツかったですね」
平田
「でも、それが自信につながるわけですね。あれを飲んだら何でも飲めるぞって…」
大西
「やっぱり自信につながりますね」
平田
「良かった、僕はアニメの世界だけで(笑)」


平田
「今後の六太に期待する事ってありますか?」
大西
「六太には今のままでいて欲しいんですよね。六太の一番良い所は自分の中にしっかりした芯が1本ある所。例えば、国際宇宙ステーションに行くクルーならすぐにバックアップクルーになれるけど、そしたら月には行けなくなるって言われた時、迷わずに月を選びましたよね。宇宙に行ける可能性は遅れるし、もしかしたら選ばれないかもしれないけど、俺は月に行くんだって、そっちを選んだシーンはすごく好きです。あとは他人を決して蹴落とさない所とか。他人より自分をよく見せようとかないじゃないですか。僕は彼のそういう所がすごく好きなので、むしろ六太には今のまま変わらずに行ってほしいです」
平田
「小山先生もそこはわかっているんじゃないのかな。確かにそうですね、言われるまで忘れていました。僕はドロドロの人間なので(笑)。こういう世界でお仕事させて頂いていると、そういう人物(六太)になれるっていうのが幸せですよね。だからと言って平田がそういう人物かと思ったら大きな間違いですからね(笑)」
大西
「実際、六太として喋られている時は六太になっているんですよね?」
平田
「何となくですけどね。いろいろあるんですよ(笑)。口の尺に合わせないといけないとか、こういうシーンだからこういう風にしないといけないとか雑念はいっぱいあるんですけど、その中でできるだけ、六太は何を持って六太でいるのかとか考えて…」


○記者からの質問

記者
「小学校の時の夢は何ですか?それを実現できていますか?」
大西
「小さい時は科学者になりたいと思っていましたね。宇宙は好きでしたけど、科学系一般が好きだったので…」
平田
「宇宙が好きになったきっかけは?」
大西
「やっぱり映画なんですよ。小学校2年くらいの時に父親に『スターウォーズ』に連れて行ってもらって…」
平田
「僕は小学校の時は電車の運転手になりたかったです。今でもなれるものならなりたいです。だから夢は叶っていません」
大西
「声優になりたいと思ったきっかけは?」
平田
「きっかけはないんですよ。気がついたら劇団に所属してまして、役者になりたいっていうわけでもなく、『お前、やる事ないんだったら芝居でもやれ』って高校の先生に言われて、先生が勧める劇団に入ったら『声の仕事やるか?』って…。ウチの劇団の先輩で声の仕事をやってらっしゃった方が何人かいらっしゃって『やります、やります』って…。最初は外画の吹き替えですね。それからアニメの方へ。同じ芝居の世界ですので、今はとてものめり込んでやっていますけど、やりたいと思った事はない(笑)」


記者
「子供が夢を実現するために一番大切な事は?夢を持つ素晴らしさは?」
大西
「好きな事は誰でも頑張れると思うんですよね。でも、好きじゃない事、苦手な事を一生懸命やると、それが人を一番成長させるというか、自分の強さになって、最終的には将来、自分が好きな事をやる時に役に立つと思うんですよね。自分は今こういう事はやりたくないと思う事でも一生懸命やる事が大事ですよって今の子供たちに伝えたいですね。自分の反省を踏まえてそう思います」
記者
「子供たちの目標になっているという意識はありますか?」
大西
「ブルースーツを着て公演とかをさせて頂いて『自分も将来、宇宙飛行士になりたいんです。握手して下さい』って子供が目をキラキラさせている姿を見ると、やっぱり責任ある立場だなと思いますし、自分が感じた事を次の世代の子供たちに伝えていく義務があるなと思いますね」
記者
「子供の反応は?」
大西
「純粋に喜んでくれる子がほとんどで、質問コーナーでも『はーい』ってすごく元気よく手をあげてくれます。次から次へと質問が飛んできて、私も子供とそういう時間を持つのが楽しみですね」


進行
「宇宙に行く順番を待つ心境は?」
大西
「『待っているのは大変じゃないですか?』ってよく聞かれるんですけど、待っているってつもりはないんですよね。待っているって受け身の言葉だと思っているので、これから先、実際にアサインされるまでに1、2、3年という期間をどれだけ有効に使うかで宇宙に行く時の宇宙飛行士としての実力というのは、どういう心掛けでその期間を過ごすかで天と地くらい開いちゃうと思うんですよね。だから待っているというつもりは全くなくて、いかにこの時間を自分のスキルをさらに磨くために使おうかと思っています」
進行
「高所恐怖症って本当ですか?」
平田
「そうなんですか!?」
大西
「ダメなんですよ。でも何か箱に入っていれば大丈夫ですよ(笑)。パイロットも大丈夫でしたし…。船外活動もやってみたいんですよ」
平田
「宇宙まで行くと高いとか低いとか関係ありますか?」
大西
「でも野口飛行士が仰ってましたけど、最初にエアロックに行ってハッチから外に出て、足元に地球がぶわ~って広がっているのを見た時に無意識に手すりをギュと握りしめたって。本能的に落ちると思うらしいんですよね。」
平田
「宇宙に行ったら、まず何をやってみたいですか?」
大西
「やっぱり地球を見てみたいですね。戻って来られた宇宙飛行士の先輩方が口を揃えて言うのはやっぱり地球の美しさ。宇宙ステーションの中で一ヵ所だけキューポラと言って、地球を向いてガラスの窓が張られている空間があるんですよ。星出宇宙飛行士はブラックホールと呼んでいて、そこに行くとしばらく出てこられないって」