7月24日(月)
「一級建築士になりたい」「死ぬ3日前まで働ける知識を」終わりのない学び、今大人たちが勉強に励むワケ
早朝から深夜まで、大人たちが足繫く通う勉強カフェ。その多くの人たちの目的は、夢を叶えるためや老後など将来への不安に備えて学び直し、何かしらの資格を取るということ。その真剣な姿から見えてくる、それぞれの思いをノゾキミしました。
【特集】「死ぬ3日前まで働きたい」 還暦間近で大学院、一級建築士、老後の備え、彼女のため、母親の死…”大人の自習室“で勉強に励む人たちに密着
学び直す大人たちが増加中
早朝から深夜まで、目標を持つ大人たちがやって来て、勉強に打ち込む“大人のための自習室”が今人気です。「資格を取る」「夢を叶えたい」「将来への不安に備えて」など、学ぶ理由はさまざまですが、その真剣な姿から見えてくるのは、それぞれが抱く強い思い…いま勉強に“ハマる”大人たちに密着しました。
※情報は2023年7月24日放送時点のものです。
転職のための資格を…早朝の「勉強カフェ」で出会った大人たち
早朝から勉強に励む
大阪のビジネス街、本町にある「勉強カフェ」。
午前6時50分という早朝にもかかわらず、すでに勉強に没頭する男性(33)がいました。今は離職中ですが、スキルアップを目指して、日商簿記1級取得に挑戦するといいます。
「高校が商業高校だったんですけど、学生時代は部活動にも取り組まずに何もせず、ただ学校に行って帰るだけの繰り返しだったので、得意なもの・特出してできるものが、今のところはないので。そこを目指したいとなると、自分が経験した中では、『簿記』が出てきました」(日商簿記1級取得を目指す男性)
合格したら、経理関係の仕事に就きたいということです。
社会人を中心に人気を集める「勉強カフェ」
「勉強カフェ」は、大阪と兵庫に5店舗を展開しています。現在の会員数は約1000人で、大阪・本町店の場合、月1万2127円で午前6時30分から夜中の0時まで使い放題。「空いた時間に、集中して勉強ができる」と、利用する社会人は年々増えているといいます。
得意だった英語を学び直しキャリアアップ
自動車関連会社勤務の女性(29)はいつも出勤前に来て、英語の民間試験に向けての勉強をしています。英語力をアップして、外資系企業に転職することが目標だといいます。
「学生時代は英語が得意だったんですが、社会人になってから時間が空いてしまったことを後悔しています。昔、思い描いていた『英語を使って仕事をする』ことをやりたいと思って。家に帰ると、どうしても怠けてしまうので、一日に少しの時間でもいいので、積み重ねて勉強していきたいです」(英語の勉強をする女性)
見ず知らずの”同志“と刺激し合う
「勉強カフェ」で自習をする多くの人が、何らかの資格を取ることを目標に掲げています。見ず知らずの“勉強仲間”から刺激を受けられることも、ここで勉強する理由のようです。
「彼女と一緒に生きていくために」日常の延長としての勉強
中国出身の恋人のために中国語を勉強
「勉強カフェ」大阪うめだ店には、夜になっても、会社帰りの人たちが続々とやって来ます。山﨑健太郎さん(27)も、その一人。勉強しているのは、中国語です。
「目的というよりかは、付き合っている人が最近妊娠して、その人が中国出身で、日常会話が中国語なので、中国語を勉強しないといけないかなと」(山﨑さん)
彼女のお腹の中には新しい命が
まだ正式に夫婦になっていないものの、彼女と一緒に生活をしているといいます。
「名前は、ヤン・ウェンシーといいます。中国・遼寧省から来ています」(山﨑さん)
ウェンシーさんは、奈良の大学に留学するため、2018年に来日しました。山﨑さんとウェンシーさんが打ち解けるのには、言葉の壁など関係なかったといいます。
「ネットのチャットで知り合って、『話が合うね』ということで、梅田で初めて会いました」(山﨑さん)
料理は山崎さんが担当
中国では、男性が料理を作ることが多いそうで、いつも山﨑さんが食事の支度をしているといいます。帰宅後、Yシャツ姿で料理をする山崎さんを、ウェンシーさんが見守ります。この日のメニューは「野菜の肉巻き」と「水餃子」ですが…。
「味がしない」(ウェンシーさん)
「うん…」(山崎さん)
「たぶん醤油がなかったからじゃない?」(ウェンシーさん)
「それでも食べてね」(山崎さん)
「栄養のためにね」(ウェンシーさん)
「未来の選択肢を増やすため」の勉強
近々、入籍して夫婦となり、2024年1月には子どもが産まれます。
「子どもには、中国語とか自分がやりたいことをやってほしいです。それが一番重要です」(ウェンシーさん)
「選択肢を広げる意味で、仕事を選べる自分を保つために、勉強を頑張っています。中国語ができると、仕事の幅が増えるので」(山﨑さん)
中国語をマスターしておけば、ウェンシーさんの故郷で生活をすることもできます。一緒に生きていくために、これからも中国語の勉強を続けていくといいます。
「これではヤバい」「年金はあてにならない」将来・老後…不安から勉強する大人たち
合格率10%「一級建築士」に挑む
「勉強カフェ」には、将来に備えて資格を取ろうという人が多く、2年間通い続けているという不動産会社勤務の男性(25)も、その内の一人です。目指しているのは、合格率10%といわれる「一級建築士」合格です。
「大学時代、アメリカに交換留学していて、海外の学生と接する機会があって、そこで日本の経済に不安を覚えてしまって…。『これではヤバいな』という気持ちで今、頑張っています。ここで勉強している人が多いので、それを見ていたら自分も鼓舞されることが大きいかなと」(一級建築士合格を目指す男性)
コロナ禍で“ガクチカ”がなく…
大学3年生の女性(20)は、就職に不安を抱え、「証券外務員一種」の取得を目指しています。
「コロナが流行しだして、大学1年生の間はほとんどオンライン授業になって、いわゆる“ガクチカ”(学生時代に力を入れたこと)みたいなものが自分にはなかったので、それを作るためにも資格を取ろうかなと思って、勉強しています」(証券外務員一種取得を目指す女性)
「どこででも生きていける体制を作りたい」
会社で経理を担当しているという女性(57)。税理士を目指すという彼女の目的は、老後の備えのため。
「年金はあてにならないので。でも、あまり社会のせいにしたくなくて、どこででも生きていける体制を自分で作りたいな、という気持ちです。死ぬ3日前まで働きたいと思っているので」(税理士を目指す女性)
勉強カフェ大阪・荒井浩介社長
「勉強カフェ」に多くの大人たちが通うようになった背景を、「勉強カフェ」社長の荒井浩介氏に聞いてみると…。
「将来、“食いっぱぐれてしまう”という不安感から、『スキルを付けておかなきゃ』という意味で、求められる要素が一つあったと思います。一方で、学びというものを楽しみ、趣味的な要素で成長を続けていきたいという、『生涯学習』の要素もあると思います」(荒井氏)
立ち止まっていた時間が動き出す…いくつになっても「学び直せる」
59歳で大学院を目指す!
定年を目前に会社を早期退職した大西達也さん(59)が「勉強カフェ」に通う理由は、なんと…。
「数学好きが高じて、大学院を受けようかなと思いまして。この年になって。もっと理解したり、問題を解くのが楽しいということが動機です」(大西さん)
Q.早期退職してまで学び直そうという原動力は、何ですか?
「原資というのは、誰にでもあると思います。みんな、それを自分で抑えてつけている。自分は、そうでした。押さえつけていたのを外したら、こうなったという感じです」(大西さん)
資格を取りたいというより「知識を得たい」
カフェの一番奥、人目に付きにくい席で勉強をしている内堀加奈さん(32)。読んでいたのは、ITや経営全般に関する基礎知識が身に付いていることを証明する「ITパスポート試験」の参考書です。
「資格を取りたいというよりは、知識を得たいという感じで勉強をしています。2022年の夏にメンタルをやられてしまって、会社を休んでいたんですが、今はだいぶと元気になってきたので」(内堀さん)
内堀さんにとって「勉強カフェ」は、前向きに進んでいる人たちの息吹が感じられる、居心地の良い場所だといいます。
夫の言葉に救われた
2020年に結婚した内堀さん。職場の人間関係で心を痛めたときに支えてくれたのは、夫でした。
「本当に“負の循環”で、お腹が痛くなったり、寝られなくなったり、朝に涙が止まらなくなったり、体に症状が出てワーッとなっていたとき、夫が軽い感じで、『調子が悪いんだったら、休めば良くない?』ぐらいのトーンで言ってくれたことに、救われました。頭を空っぽにする…そういう時間って、今までの人生を振り返ってもなくて、それを与えてもらえたというのは、良かったなと思っていて。立ち止まっていたからこそ、『よし、じゃあ進もう』と思えました」(内堀さん)
新たな自分を見つけた内堀さん。近々、職場復帰する予定です。
「母親の死」「祖父との約束」…それぞれの事情、それぞれの想い
「会社に言われて」2回目の挑戦
建築関連会社に勤務する男性(48)の目標は、建築施工管理技士。2回目の挑戦です。
「会社で、資格を取れと言われたので、やっています。この年になると目が悪くなったり、覚えが悪くなったりするので、ちょっとしんどいですね(笑)」(建築施工管理技士取得を目指す男性)
母の死をきっかけに、人生を考え直す
サービス業の男性(51)が目指すは、司法書士。
「母親が4年前に急に亡くなって、そのときにいろいろと考えて…仕事的にも行き詰まったというか、もう一度、人生を考え直そうかと思って目指してみました」(司法書士を目指す男性)
「ここまできたら執念」祖父との約束守るため5回目の挑戦
ドラッグストア勤務の女性(32)は、薬剤師の国家試験に5回目の挑戦です。
「しょっちゅう心が折れています。ただ、小さいころの約束で…」(薬剤師を目指す女性)
諦めずに挑戦を続ける理由は、「医療に関わる仕事に就く」という、がんで亡くなった祖父との約束。
「もう、ここまで来たら、執念みたいなところもありますね(笑)」(薬剤師を目指す女性)
“学ぶ”ということは、“前に進み続ける”ということ。いくつになっても、学びに終わりはありません。
(「かんさい情報ネットten.」 2023年7月24日放送)
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