1月7日(金)
【2022年問題とは】“空き家”を増やす大きな要因に その解消に向けた注目の取り組みとは
住宅街で突然見えてきたのは…「崩落の危険」の文字。よく見ると住宅の外壁が剥がれ落ち、中がまる見え…。長年放置され、倒壊の恐れもある“空き家”。その数は年々増え続け、全国でおよそ848万戸にのぼります。その中で、大阪府は71万戸と東京都に次いで全国で2番目の多さです。この状況下で、今年「2022年問題」がやってきます。この問題が“空き家”を増やす大きな要因になるのでは、といわれていますが、そもそも「2022年問題」とは何なのか? そして“空き家”問題の解消に向けた注目の取り組みを取材しました.
厄介者が一転!最新空き家活用術に迫る

地域の厄介者・・・空き家
放置すると倒壊の恐れもある「空き家」。この問題を解決すべく、いま、各地でさまざまな取り組みが行われています。空き家を借りてリノベーション、負担は企業側でオーナーの負担はゼロ。リフォーム費用が無料ってどういうこと?さらに!商店街の空き家を解体して畑に!?いったいなぜ?放っておけば厄介モノ。でも、アイデア次第で魅力的な場所に!「空き家活用のカラクリ」に迫ります。
“倒壊の危険・景観の悪化”空き家の実態とは

倒壊の危険がある空き家の内部
こちらは10年以上、手つかずとなっている空き家。中に入ってみると畳は朽ち果てる寸前、壁は崩れ、柱がむき出しに。この物件は、親が亡くなった後、だれも住むことなく放置されていたそうです。倒壊の危険性や景観の悪化など、放置すると、さまざまな問題が出てくる空き家。なぜ、いま増え続けているのでしょうか。不動産に詳しい「イクラ株式会社 坂根 大介さん」に聞きました。

イクラ株式会社 坂根 大介さん
(坂根さん)
「日本は戦後焼け野原になってしまったので一から家を作らないといけなかったため新築ばかり住んできた人たちが多く、新築信仰が今でも残っています。今も物件のおよそ8割が新築で、この新築人気が空き家増加の要因とも言われています。」
さらに空き家増加!?“2022問題”

2020問題と「生産緑地法」
さらに、ことし2022年、懸念されるある問題が。それがー「2022年問題」。
都会などにも農地を残すことを目的に「生産緑地法」が1992年に定められました。これは原則30年間、農業を行う事などを条件に、固定資産税などを優遇するものです。その30年の指定が解除されるのが2022年…。農地だった土地の制限がなくなるのです。
その土地の広さは、大阪府だけでおよそ1900ヘクタール。甲子園球場490個分の広大な土地の一部が、住宅用に供給されると言われています。今、ほとんどの所有者が高齢になっていて、農業を継続できないと判断した場合、“生産緑地”を手放して、その土地に新しい家が建ち、(古い家から引っ越すことで)空き家が増えるといわれています。
リフォーム代がタダ1?注目の「空き家活用術」アキサポとは

白川に面した築古年の一棟貸しの宿泊施設
深刻化する空き家問題。そんな中、不動産業界では新たな取り組みが始まっています。
京都市東山区の建物、京都市内を流れる白川に面した築115年以上で一棟貸しの宿泊施設、この物件を管理しているのが、アキサポの印南さんです。

アキサポ 印南 俊祐さん
(アキサポ印南さん)
「ここは最大5人まで泊まることができ、建物は、京都らしさを意識した造りになっております。」2階は白川を眺めながら、くつろぐこともできます。

アキサポの仕組みとは まずは物件を調査
実はこの建物、2年前に空き家から生まれ変わりました。こちらは、新たな取り組みとして、いま注目を集めている“所有者から空き家を借り受け活用するビジネス”、その名も「アキサポ」。
仕組みはこうです。まずは所有者が、空き家の活用についてアキサポに相談します。アキサポは、物件を調査し、活用ができると判断すれば、所有者から一定期間、物件を借り受けます。
リフォーム費用はアキサポが全額負担してくれるんです。オーナーの負担はなんと“0”。

アキサポの仕組みとは オーナーの負担は“0”
家賃などの収入の一部は、所有者にも支払われ、借り受ける期間が終われば、建物はそのまま所有者に返されます。これまで手掛けた物件はおよそ50件。ただし、物件によっては、リフォーム費用の一部を所有者が負担することや、そもそも活用が無理な場合もあります。

倉庫からガレージに!活用転換
アキサポでは、オーナーの意向と周辺住民らへ聞き取り情報をもとに、どのように活用するか決めているんだそうです。例えば、倉庫だった物件は…近所に大型バイクを持つ人が多かったことからバイクのガレージに!月の売り上げは40万円もあるそうです。さらに、20年以上放置された社宅は、飲食店に生まれ変わりました。
先ほどの、宿泊施設の近くに住む人は―
(住民)
「やっぱり空き家になると通る人も余計に少なくなる。うちの商売もダメだしお店ができたらみんなにぎやかになるし、できたらうれしいですよ。」
ご近所さんの意見も聞くことで地域にとって必要な場所へと生まれ変わるのです。

親から相続したお宅をアキサポに依頼
更にこんなケースも!
現在、アメリカに住む石井さん。親から相続した家の活用を依頼しました。契約期間は10年です。
(石井さん)
「ゆくゆくは子供たちに家をあげることになると思うんですけど、今はどうするかわからなくて、そこでアキサポのシステムを見つけて、10年間何も心配しなくて貸して、そのあと売るなり子供にあげるなりしようと思いました。」
手放さずに管理してもらえるのも魅力です。
(アキサポ印南さん)
「放置されている空き家をみると宝の持ち腐れというか、私は空き家には可能性を感じていて、宝だと思っています。」
市場に畑で「いちばたけ」って?

神戸市灘区・灘中央市場の現状
空き家を活用し、賑わいを取り戻している場所が他にも。およそ100年の歴史がある神戸市灘区の「灘中央市場」です。

神戸市まちづくり専門家 坂本 友里恵さん
神戸市が指定する「まちづくり専門家」として活動している坂本 友里恵さんに市場を案内していただきます。精肉店や鮮魚店などが並ぶなか、シャッターが下りている所も目立ちます。市民の台所として親しまれてきましたが、現在営業している店は、最盛期の半分以下になってしまいました。

空き店舗が“畑”に!
この市場で行っている空き家の活用とはなんと畑。
3年前にオープンした市場と畑で、その名も「いちばたけ」。空き家があった場所を更地にし、イチゴや菊菜など季節の野菜を中心に20種類ほど栽培しています。
(神戸市まちづくり専門家 坂本さん)
「農園をやれば、いままで市場に来ていなかった方、若いお母さんとかお子さんも、買い物以外のきっかけができるんじゃないかなと。そこから市場を知って買い物をしてもらう。地域活性につながらないかなと思って始めました。」
運営の中心は、坂本さんを含めた3人。神戸市の職員でまちづくりを担当していた佐藤さんと、
同じく神戸市の職員で農業が専門の丸山さん。それぞれが、得意分野を生かしながら個人的な活動として取り組んでいるんです。

月に2回の無料収穫イベント
月に2回行っている無料の収穫イベントにはたくさんの人が訪れています。
(イベントに参加した人)
「こうやって自由に来て子供にも触らせてあげられる環境あって、なおかつ市場の食べ歩きもできたりとか、そういう楽しみもあるので両方楽しめていいなと。」
また、市場の人もこの活動に期待を寄せています。
(精肉店の人)
「新しいお客さんにも、(イベントを)キッカケに市場に来られた人もおられるので良い取り組みだと思います。」
(青果店の人)
「市場の中に畑があることが珍しいことで、それで皆さんが寄ってきてくれて、活性化のために“いちばたけ”がものすごく助かっています。」
(神戸市まちづくり専門家 坂本さん)
「仕事で始めてこの市場を知った中で、やっぱり市場の食べ物がおいしいんですよ。新鮮なものもすごくおいしいものがたくさんあって。このお店が10年後、20年後残ってるのか心配になった部分があるので、活力をつけたりとか盛り上げたり、もっともっとやりたないと。」
さまざまな方法で活用が進む「空き家」。
アイデア次第で「空き家」が“地域の宝”になるというのが、今回の「カラクリ」でした。
(かんさい情報ネットten. 2022年1月7日放送)
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