8月26日(火)
相次ぐ子どもの性被害…卑劣な犯行実態と教育現場の対策は
子どもたちを守るはずの教育現場で、教員による性加害事件が後を絶ちません。SNS上での盗撮画像流出など、学校外でも子どもを狙った犯罪が起きています。こうした性犯罪の「加害者」も「被害者」も生まず、子どもたちが安心して学び、過ごせる場所を守るために、いま何が必要なのか、密着取材しました。
【卑劣】小児性愛者が集う闇サイト、隠語使った盗撮コミュニティ…子どもが狙われる性犯罪の実態 教育現場や社会に求められる対策は

子どもを狙う卑劣な手口とは?
今、盗撮画像やAI技術を悪用した性的な画像の流出が後を絶ちません。小児性愛者が集まるウェブサイトも存在し、犯罪者同士がそこで知り合うケースも…。心に深い傷痕を残す卑劣な性犯罪。子どもたちを守る立場であるはずの教員による犯行も大問題になる中、学校や社会にできることとは?
女児にわいせつ行為 加害者2人は“小児性愛者が集うウェブサイト”で知り合う

娘が被害に遭ったという女性
「性教育もまだなので、意味がわからないまま、無知な部分をついた犯行というところが本当に許せない」―怒りを押し殺して話すのは、大阪府に住む40代の母親です。2024年7月、自宅近くのマンションの敷地内で、三女(当時7歳)が男2人からわいせつな行為をされました。

卑劣な犯行の手口
裁判記録などによると、「カマキリ探ししよ」などと言って女の子に近づいた男2人は、1人が女の子と会話し、もう1人は少し離れた場所で周囲を見張るなど、役割を分担。誰かが近づいてきた場合、地面を蹴ったり肩を叩いたりして合図を送り、互いに注意を促していました。

犯行場所となった階段の踊り場
さらに、ひと気が少なく防犯カメラのない階段に女児を連れていき、ひざの上に乗せてキスをしたり、下半身を触ったりする様子を撮影していたのです。男2人は、当時会社員だった愛知県の都築誠受刑者(52)と、介護職員だった大阪・堺市の玉井浩紀受刑者(59)で、2025年7月、懲役6年の実刑判決が確定しました。

あるウェブサイトで知り合う
離れた場所に住む男2人が出会ったのは、小児性愛者が集まるウェブサイト『アリスインワンダーランド』でした。サイトはすでに閉鎖されていますが、特殊な方法でしかアクセスできなかったといい、“子どもが一人で遊んでいる”“防犯カメラが少ない”地域の情報が共有されていました。

念入りに準備したうえで犯行に及んだか
2人は“散策”と称して、犯行場所を事前に下見。さらに、小学校のホームページに記載された行事表を確認し、放課後の時間が長くなる短縮授業の日を狙って、犯行に及んでいました。
(裁判記録に基づくメッセージアプリの内容)
『新規の子を物色してるんだけど、なかなかですな。暑かったから、どこにもおらん』
『涼しくなりましたから、これからですよ』
隠語として絵文字を使用 10万人規模の“盗撮コミュニティ”の実態

水遊びしているだけで被害に
こうした性犯罪や、その“予兆”をインターネット上で監視する人がいます。
(ひいらぎネット・永守すみれさん)
「これは最近見つけたんですが、道路上で子どもが水着を着て水遊びしているのを、隠し撮りしているものです」

絵文字が表す意味は?
民間の団体『ひいらぎネット』代表・永守すみれさんによると、絵文字が隠語として使われ、一般にはわからない形で盗撮コミュニティがつくられているといいます。
(永守さん)
「関西/鳥の絵文字=関西地域で盗撮をしていることを表しています。逆さまになっている絵文字と鳥の絵文字で、『逆さどり』=スカートの中を下から盗撮するもの。靴の絵文字は、靴にカメラを仕込んで盗撮していることを表すものだと思われます」

卒業アルバムを悪用
(永守さん)
「私がすごく懸念しているのは、こういったコミュニティの規模の大きさです。例えば、ここには10万人以上が参加しています」
最近では、AI技術を悪用し、学校の卒業アルバムの画像が性的な画像に加工されたうえで大量に投稿され、中には売買されるものもあるといいます。

ひいらぎネット・永守すみれさん
永守さんは、「画像を賞賛・拡散すること=加害行為に加担することと同じだ」と警鐘を鳴らします。『ひいらぎネット』では、ネット上をパトロールし、性被害に遭っている人物を特定できた場合は学校や警察などに通報していますが、特定そのものが難しく、実際に通報に至るのはわずかだといいます。
女子児童の下着を盗撮しSNSで共有…子どもを守る立場の教員らが逮捕

児童が主たる被害者の性犯罪検挙件数
子どもが被害者の性犯罪の検挙件数は、2023年の法改正で適用対象が広がったこともあって増加し、2024年は3598件にのぼりました。その中で目立つのは、教員による性犯罪です。2023年度、処分を受けた教員は過去最多になりました。

教員が参加する盗撮グループが発覚
2025年6月には、女子児童の下着を盗撮しSNSのグループチャットで共有したとして、教員の男2人が逮捕・起訴されました。教員約10人が参加する“盗撮グループ”の存在も発覚し、女の子の画像など約70点を共有していたといいます。
文部科学省は「教育界を揺るがすような大変ゆゆしき事態である」として、2025年7月、緊急に開いた会議で、全国の学校に対し、盗撮などの被害を防ぐための対策の徹底を求めました。
教室内の防犯カメラ設置は「賛成しかねる」試行錯誤する教育現場

校内に防カメ7台を設置
教育現場で性被害を起こさせない環境は、どう作ればよいのでしょうか?取材した大阪府内の公立中学校では、外部からの侵入が起きやすい箇所に7台の防犯カメラを設置しています。

防犯アドバイザー・京師美佳さん
6月には、更衣室の窓ガラスが割られて室内が荒らされる被害があり、犯人が侵入する様子を防犯カメラが捉えていました。物を盗られるなどの被害はありませんでしたが、防犯アドバイザー・京師美佳さんは「それでも気をつけるべき点がある」と指摘します。
京師さんによると、「物は盗られなくても、隙間にカメラが付けられることが結構あるので、隅々までチェックすることが非常に大切」で、盗撮のカメラがないか、更衣室だけでなく教室の定期的なチェックが必要だといいます。

教室内の防カメ設置には慎重な姿勢
ただ、防犯カメラを教室内に設置することについては、この中学校の校長は「“自分が映されている”と認識できる状況で、子どもが座らなければならない。そのことをプレッシャーに感じて、教室に入るのが怖い、学校に来づらい子が出てくる中で、学校長としては賛成しかねる」として、プライバシー保護の観点から慎重な姿勢を見せています。
(大阪府内の公立中学校校長)
「自分の1つの間違った行為で、日本全国の先生方が悪く見られてしまう。全国の教員の仲間を裏切ってしまうことになる。自分の行動に自覚と責任を持つことが求められていると思います」

性暴力を防止するための研修
大阪・堺市では年に1度、公立学校の全ての教職員を対象に、性暴力を防止するための研修を行っています。相次ぐ事案を受けて、2025年は校長・教頭・教員のリーダーとして学校を運営する主幹教諭らいずれかの参加を求め、子どもとの正しい距離感などを教えました。
(講師)
「先生方は、子どもと関わるときに触っていませんか?『あ、頑張れよ』『おー、頑張った』って。このタッチング、いるんでしょうか?」
研修を受けた堺市の小学校校長は、「子どもと接するときの物理的な距離感や、気持ちを確かめて接していくことが改めて大事だなと思った」と話していました。

深い傷痕を残す卑劣な犯行
当時7歳の娘が被害に遭った母親は、こう訴えます。
「『ママの知らない人には、ついていかないでね』『ママが挨拶する人は知っている人だけど、ママが挨拶しない人は、みんな知らない人だよと』と教え直しました。子どもがいる以上、絶対にあり得る犯罪ですので、学校・地域・すべて含めて、できることは考えてやっていただきたいです」
卑劣な犯行は、子どもに深い傷痕を残します。どう死角を減らすのか、地道な対策が求められます。
(「かんさい情報ネットten.」2025年8月26日放送)
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