9月23日(火)
来場者数2000万人越え 閉幕まであとわずか…万博がもたらした経済効果とは?
10月13日に閉幕する大阪・関西万博。開催前から期待が寄せられてきた万博による経済波及効果。「大阪」だけではなく、周辺の自治体も、今回の万博を機に、地元への誘客につなげようとPR活動に本腰を入れています。鳥取県も、万博を「本会場」、鳥取全体を「サテライト会場」と位置付け、会場内で様々なイベントを行い、県内への誘致を図ろうとしています。
一方、大阪周辺の関西には、外国人が想定より来なかったという声や当初期待していたほどの波及効果がなかったとの声も…万博スタッフとして働いてきた人の次のステップとして、新たな働く場所につなげようという動きがあるほか、万博の展示を機に新たなビジネスチャンスを得た関西企業が次のステージへと進みだす姿に密着しました。
【万博】経済効果は2兆7400億円想定も思わぬ“誤算” 『人材』に『技術』…閉幕後にレガシーとなる未来とは―
2025年4月に開幕した大阪・関西万博は、黒字化の目安を上回り、来場者は2000万人を超えました。“万博効果”は会場内にとどまらない一方で、思わぬ誤算も…。万博が夢洲の“外”にもたらした経済効果と、閉幕後にレガシーとなる“未来”を取材しました。
経済波及効果、大阪以外は“想定外”の苦戦…

万博による経済波及効果に期待
盛り上がりを見せる大阪・関西万博も、閉幕まで残り1か月を切りました。関西各地で万博による経済波及効果に期待が寄せられる中、調査研究機関『アジア太平洋研究所』は、万博による経済波及効果を約2兆7400億円と想定したものの、大阪と他府県では「大きな差が開く」としていました。

1位と2位に2兆円の差
関西広域連合に加盟する地域ごとにみると、1位は開催地域となる大阪府で約2兆600億円、2位は兵庫県の約720億円で、大阪府と他府県では約2兆円の差が開いています(その他の地域を除く)。

趣のあるプレミアムルーム
京都市内のホテル『アゴーラ京都烏丸』は、万博を機に京都から大阪へ足を運んでもらおうと、2021年に開業しました。万博利用も見越してキャンペーンを行ってきたものの、総支配人の大濱秀之さんは「特段、国内外から京都にお客様が増えたとは感じていない」と話します。

景観条例が周知の壁か
この夏、期待した利用客数には及ばなかったという“想定外の事態”。背景にあるのは、外国人観光客への周知不足です。京都は景観条例もあり、街中に大きく万博の広告を打ち出すことが難しい上に、京都には万博オフィシャルのシャトルバスが通っておらず、電車で夢洲駅に向かうには複数の乗り換えが発生するため、案内が難しいといいます。

シャトルバスがある兵庫も苦戦
ただ、シャトルバスがある兵庫県も厳しい状況だといいます。万博期間中、尼崎市内で土日に開催されている『ひょうご楽市楽座』では、会場の隣に万博協会が運営する駐車場があり、マイカーを置いてシャトルバスで万博会場に向かうことができます。しかし、兵庫県企画部・上田和宏主幹によると、「3000人ほどが来ていただければいいなと始めたが、最初のころは1500人程度で推移していた」ということです。

県内各地の飲食や物販ブースが並ぶ
約5億4000万円を投じたこのイベントでは、県内各地の飲食や物販ブースが並んでいて、来場者からは「楽しめた」という声もあった一方、開催当初の一日の来場者数は想定の約半分でした。

会場からは万博の花火が見える
その背景にあるのは、『パークアンドライドの利用率の低迷』と『イベントそのものの認知不足』だと、上田主幹は振り返ります。今では、万博で打ち上げられる花火が見える場所として認知され、地元を中心に集客力が徐々に高まってきています。

想定額を達成できるのか
当初の想定について、大阪経済大学・下山朗教授は「大阪・関西万博に行くだけではもったいないので、もう1泊を京都、もう1泊を奈良というように、万博をきっかけに延泊してもらう形の経済効果が想定されたが、残念ながら『どう行ったらいいのか』『どう帰ってこられるのか』といった情報は不足している。各地域へ誘導するような仕組みづくりは、まだまだ改善していく余地はある」との見方を示しています。
閉幕までの残り期間で、約2兆7400億円の想定を達成することができるのでしょうか―。
大企業も注目!即戦力となる“万博人材”

万博閉幕後の職探し
『パソナ』によると、大阪・関西万博では延べ2万人のスタッフが働いていて、万博閉幕と同時に職を失う人も少なくありません。そんな中、次の職を探せるイベント『万博キャリアNEXT』が開催されました。

誰もが知る大企業も参加
参加した企業は100社を超え、誰もが知る大企業も、即戦力となる“万博人材”の採用に乗り出していました。
(『合同会社ユー・エス・ジェイ』大河原貴信課長)
「(USJは)海外からのゲストも非常に多いですが、語学に対応できるクルーが少ないという課題もあります。そこを強化する意味でも、このイベントには期待しています」
(『星野リゾートグループ』窪田哲朗さん)
「パビリオンでの問題解決や海外の方への接客サービスなど、(ホテル運営に)直接通じるような経験をたくさんしているのも、期待しているところです」

経験を生かせる仕事を探す小林靖彦さん(30)
メーカー勤務などを経て、万博会場では道案内や迷子を捜す仕事を担っているという小林靖彦さん(30)は、英会話教室などを展開する『ECCグループ』のブースに訪れていました。小林さんは、「万博の仕事を活かしたいと思いレジャー系や、英語を使いたいと思い英語系の企業を回った。次のキャリアはすごく大事になってくるので、残り1か月のタイミングで企業の話を聞けるのは貴重な機会」と話していました。“万博人材”は、閉幕後も関西企業の後押しになることが期待されています。
「命を削ってでも…」万博出展に賭けた医療機器メーカーの“レガシー”

にぎわう『fcuro』のブース
万博で展示された製品や技術が、すでに次のステージに進んだ例もあります。6月、多くの子どもたちで賑わっていたのは、大阪の医療機器メーカー『fcuro』のブースです。膨大な枚数のCT画像を瞬時に分析できるAI『ERATS』を紹介していました。

CT画像を1枚ずつ確認していく
『ERATS』を開発した岡田直己医師は、救命救急で医師として働きながら、医療機器メーカーの代表を務めています。
(『fcuro』代表・岡田直己医師)
「通常、僕らは患者さんが運ばれてきたら全身CTを撮って、1枚ずつ上から下まで確認しながら、画像を読んでいく作業をしていくことになります」
岡田医師によると、通常、全身のCT画像を読み解くのに必要な時間は約5分。一方、大量出血の際、失血死までのタイムリミットは1時間といわれ、5分すら惜しいといいます。

AIで問題のある画像だけを指摘
そこで活躍するのが『ERATS』です。全身のCT画像を読み込み、問題のある画像だけを約10秒で指摘することができます。この機器を広く知ってもらうために選んだのが、万博でした。

万博出展後、いろんな病院から声が
『ERATS』は9月、病院での臨床研究に進み、実際に救急医療の現場で活用され始めました。
(岡田医師)
「万博出展を終えて、いろんな病院から声がかかり、うちも導入してくれという話をいただいたので、非常に有り難かったです。今後、いろんなところで使ってもらえるようなものに、進化させいければと思っています」

万博のレガシーを未来へ
世界中から人や技術・アイデアが集まった万博。その機会を一過性に終わらせないよう、万博のレガシーで新たな成長力を生み出すことが求められます。
(「かんさい情報ネットten.」2025年9月23日放送)
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