8月5日(火)
ある日見知らぬ請求書が…偽造身分証であなたに「なりすます」 狙われる個人情報と闇市場の実態
スマートフォン一つで、買い物や借入ができる時代。偽造した身分証で他人になりすまし、金をだましとる犯罪が今増えている。その背景には、偽造身分証が売買される“闇の市場”の存在があった。便利さの裏に潜む"なりすまし"犯罪。誰もが被害者になり得る被害の実態とは…。
【危険】知らないうちにあなたも被害者に…偽造身分証の売買が横行 急増する『なりすまし犯罪』を裏で支える“闇の市場”の実態とは

今、偽造した身分証で他人になりすまし、お金をだましとる犯罪が増えています。その背景には、偽造身分証が売買される“闇の市場”の存在がありました。ネットの便利さの裏に潜む"なりすまし"犯罪。誰もが被害者になり得る被害の実態に迫りました。
急増する『なりすまし』犯罪 市議会議員も被害に…

消費者金融の自動契約機で…
2024年5月、名古屋市にある消費者金融の自動契約機に設置された防犯カメラの映像には、女性が自動契約機で融資の手続きをしている姿が映っています。身分証で本人確認を行い、スマートフォンを見ながら操作をしていますが、ドアの外には警察官の姿がありました。

ニセモノの免許証
警察官の求めに、女性は運転免許証を取り出しました。警察官がじっくり確認すると、女性が使っていた免許証はニセモノだったことが判明。女性はそのまま連行されました。

実際のニセ免許証
画像は、女性が実際に使っていた偽造した運転免許証です。ニセモノだと見破ったのは、借入を申し込む際に対応した、消費者金融『アコム』の審査担当者でした。

『アコム』西日本営業部シニアマネージャー・松本幸憲さん
(『アコム』西日本営業部シニアマネージャー・松本幸憲さん)
「有効期限は誕生日の1か月後の同日になるものですが、12月18日に対して、期限が10月2日になっています。ここでまず違和感があったというのが入り口です。容貌もカツラをかぶっているように見えました」
情報や顔写真から、微妙な違和感を覚え、複数の審査担当者が目を通し見抜いたといいます。

20回以上不正申し込みをしたメースも…
消費者金融が頭を悩ませる架空の人物になりすます被害ですが、中には様々な名前や生年月日、さらに眼鏡などで風貌を変えて作ったニセモノの身分証で、20回以上にわたり不正申込をしたケースもあったということです。

年々増え続ける不正申し込み
不正申込の件数は2020年と比べて2024年は1.7倍ほどに増え、今後、さらに増える見通しです。
さらに今、問題になっているのが―
(松本さん)
「実在している人物になりすましています。全く身に覚えのないところで、名前を使われて免許証を偽造されて、会社も実際に名義人が勤めている会社名を届け出て申し込んでくる場合もあります」
実在する人物になりすます手口は、この1年ほどで、アコムや関連会社では、数十件確認されたといいます。

大阪府八尾市・松田憲幸市議
大阪府八尾市の松田憲幸市議は、2024年4月、なりすまし被害に遭ったといいます。
(松田憲幸市議)
「市政報告ビラを配っているときに、急に携帯が止まったが、最初は乗っ取られているとは全く思わなかった」
急に使えなくなったことを不審に思った松田市議は、近くの携帯会社の店舗に相談しました。すると、遠く離れた名古屋市内の店舗で機種変更されていたことが発覚したといいます。何者かが、松田市議になりすまし、勝手に手続きをしていたのです。

不正使用の履歴で気付いた
(松田市議)
「発覚後にキャッシュレス決済アプリを開けたら、不正使用の履歴が全部残っていました。私が使っていない名古屋で使われている履歴が残っていて、ソフトバンクカードにも、勝手に引き出された形跡が残っていたので、それで分かりました」
被害に気付き、すぐに不正利用できないようにしたが、わずか数時間のうちにキャッシュレス決済で合わせて17万円が利用されていたということです。

勝手にローンを組まれ高級腕時計を購入か
さらに、勝手にローンを組んで有名ブランドの高級腕時計も購入されていたといいます。マイナンバーカードには、本人確認ができるICチップがついていますが、店側はカードの目視のみで確認を済ませていたということです。

ネット上に公開されている情報を悪用
被害から2か月後、松田市議になりすまし、スマートフォンをだましとったなどとして、名古屋市に住む松尾裕也被告(40)が逮捕され、その後、起訴されました。松尾被告はネット上に公開されていた松田市議の個人情報を悪用したとみられています。
偽造身分証はネットで入手…なりすまし詐欺を裏で支える“闇の市場”とは

偽造身分証はネットで買えてしまう
巧妙に偽造された身分証は、実はネット上で手に入れることができます。「本物と99.9%一致する」と謳うこの業者ですが、偽造する方法を細かく記しています。

「TOEIC」の公式認定証を偽造
このサイトを巡っては2025年7月、パソコンなどを使って英語検定試験「TOEIC」の公式認定証を偽造したとして、中国人の男性など3人が書類送検されています。
男性らはこのサイトを通じて、日本人の女性から高得点を証明する“偽造認定証”の作成依頼を受け、16万円を受け取っていました。“偽造工場”とみられる東京都大田区のビルの一室からは、日本人からの偽造依頼のデータが400件~500件ほど見つかり、警視庁は中国に犯行を主導する人物がいるとみて捜査しているということです。

『トレンドマイクロ』シニアスペシャリスト・成田直翔さん
こうしたなりすましには、裏で犯行を支える“闇の市場”があるといいます。サイバー犯罪に詳しい専門家と、さらに取材を進めると目を疑う実態が見えてきました。

情報交換のグループやコミュニティが存在
(『トレンドマイクロ』シニアスペシャリスト・成田直翔さん)
「カードローンの審査を、偽造免許証で通そうとしている人たちがやり取りしているようなグループを立ち上げていて、実際に、どこでローンが偽造免許証で通ったのかを情報交換しています。ユーザー側のコミュニティまで作っていて、まさに私たちがやっている普通の商売と同じようなことをしていて、マーケティングがうまいと思います」

何度も依頼する人も…
依頼者を集めたコミュニティでは、様々な要望に応えていて、中には偽造身分証の作成を何度も依頼しているやり取りなどもありました。ニセの運転免許証は5万円、マイナンバーカードは6万円で作成でき、中には「200万円の融資を受けることができた」と報告する人もいるといいます。情報さえあれば、誰でも簡単に他人になりすますことができ、決して他人事ではないと専門家は指摘しています。

個人情報のリストをまとめて売っている
(成田さん)
「サイバー攻撃などで大量に漏えいした個人情報のリストを、まとめて売っている人たちがいるので、個人情報を狙ったフィッシングサイトも多くあり、そこで免許証の情報を盗み取って、その情報を使って次の犯罪に巻き込まれたりする。まさに自分が全く知らないところで、詐欺に関わってしまっている。本人確認書類は、犯罪者からすれば使い勝手のいいツールになってしまっているので、情報をサイトに登録する時は、より注意して、実際に本物のサイトかを確かめた方がいいと思います」

デジタル庁が『デジタル認証アプリ』を推奨
一方で、社会全体でも、『なりすまし』を防ぐ仕組みづくりが求められています。2024年、デジタル庁は『デジタル認証アプリ』を始めました。スマートフォンなどとマイナンバーカードを使って、本人を確認するもので、カードのICチップを読みとり、暗証番号を入れるなどして、本人と認証したり電子署名ができたりするというものです。簡単で安心だとして利用を呼び掛けています。
便利な時代の裏に潜む、なりすましの罠。あなたの“名義”が、今もどこかで狙われている
かもしれません。
(「かんさい情報ネットten.」2025年8月5日放送)
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